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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科70巻5号

2016年04月発行

Derm.2016

カブトムシ

著者: 藤本徳毅1

所属機関: 1滋賀医科大学皮膚科

ページ範囲:P.145 - P.145

文献概要

 昨年,ホームセンターで幼虫を無料配布していたため,ケージ,昆虫マット,エサなど一式を購入して,カブトムシを飼育することになった.35年ぶりくらいである.蛹から成虫になるのを見て子供の頃に感動したのを思い出しつつ,まじめに飼育した.成虫にはなったが小さく,暑さ対策不足もあって短命であった.そのリベンジ,という訳で,今年は近くのお寺で幼虫をいただき飼育中であるが,先日,土にカビが生えていた.幼虫は死んでしまったかと思ったが,ちゃんと生きていた.それを見て,「Toll受容体欠損ショウジョウバエはカビに覆われて死ぬ」というような話を思い出した.カブトムシのToll受容体もたいしたものである.
 大学院時代は基礎の教室で免疫学を教えて頂いたが,当時の抄読会でToll-like受容体(TLR),IL-17,IL-23,PD-1などに関する論文を読んだ.もちろん動物実験の話であり,ヒトにどれくらい関係あるのかな,くらいに思っていた.それが今や,それらのリガンドや抗体がヒトの治療に用いられているのは周知のことであり,驚くばかりである.私は現在,膠原病,リンパ腫,皮膚外科の専門外来をしている.腫瘍と膠原病というのは一見関係なさそうであるが,免疫学という視点からみると近い存在である.皮疹や病理組織を見ながら,TLRやPD-1がどう関与しているのだろう,などと考えていると皮膚科診療は飽きない.一流雑誌に載るような成果は出せなかったが,大学院時代の4年間が今の臨床に生きている.学位は「足の裏の米粒」といわれることもあるが,大学院時代に学んだことはその後の臨床医人生をきっと豊かにしてくれると思う.多くの若い先生に大学院に行ってもらいたいと思う次第である.とは言うものの,モチベーション受容体を刺激するのは,CpGでTLR9を活性化させるように簡単にはいかない.大学院生が立派なカブトムシになると信じて,指導に試行錯誤の毎日である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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