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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科70巻5号

2016年04月発行

文献概要

Derm.2016

睡眠と皮膚

著者: 原肇秀1

所属機関: 1長崎大学病院皮膚科・アレルギー科

ページ範囲:P.163 - P.163

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 最近,睡眠を記録している.購入した活動量計に付いていた機能であるが,レム睡眠,ノンレム睡眠,中途覚醒などを簡便に知ることができ,なかなか興味深い.自分の睡眠をモニタリングしてみると,当直などの緊張を強いられる場面では,思っていた以上に睡眠が浅く,時間が確保できていても睡眠の質は低かった.睡眠は疲労回復のみならず,皮膚を含む細胞の再生,ホルモン分泌,免疫力向上にも関与し,良質の睡眠は皮膚の健康には欠かせない.人工照明や就寝前のスマートフォンの使用などは睡眠のサイクルを崩し,眠りを浅くするといわれている.それでは昔の人はさぞゆったりと眠っていたのかというとそうでもないらしい.治安の悪さ,騒音,夏の暑さや冬の寒さ,ノミやシラミによる瘙痒感は安眠を妨げ,日没後早くに眠りについても夜間に覚醒し,再び朝にかけてまどろんでいたという.住環境の向上は人間の良質な睡眠に寄与してきたのである.アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患が悪化すると,かゆみで夜に眠れなくなり,睡眠不足が続いてしまう.適度な運動やゆっくりとした入浴を勧めると,逆にかゆくなってしまって駄目だと言われることもある.また入眠は良くても,夜中にトイレに起きた際などに思わず掻いてしまうこともあるらしい.良質な睡眠のためには皮膚症状のコントロールが最優先であることは言うまでもないが,就寝前のブルーライトの曝露を避け,朝早く起き太陽の光を浴びて体内時計に朝を意識させることが大切である.患者さんによっては,毎日こたつや電気カーペットで寝ていることもあり,皮膚症状が治らないときには日常生活にもっと目を向けなければならないと考えさせられる.限られた診察時間の中で直接見ることのできないストレスを探るため,患者さんの養生につながると信じて,よく眠れていますかと今日も問いかけている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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