icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科71巻1号

2017年01月発行

--------------------

文献紹介 悪性黒色腫における抗PD-1抗体への獲得耐性に関連する遺伝子変異 フリーアクセス

著者: 平井郁子1

所属機関: 1慶應義塾大学

ページ範囲:P.42 - P.42

文献概要

 悪性黒色腫に対する抗PD-1(programmed death 1)抗体療法では,一度得られた腫瘍縮小効果を維持し続ける症例がある一方で,当初得られた腫瘍縮小効果が治療継続にもかかわらず維持されず,数か月〜数年後に再発をきたす症例がある.腫瘍免疫におけるPD-1阻害に対する獲得耐性の機序を調べるために,筆者らは転移性悪性黒色腫に対して抗PD-1抗体(ペムブロリズマブ)療法を行った78例のうち,客観的腫瘍縮小を得た後に病勢進行した4例を対象とした後ろ向き解析を行った.ベースライン時と再発時に採取した生検検体より全エクソーム解析を行ったところ,再発時の耐性獲得腫瘍検体では腫瘍細胞の増殖とともに腫瘍を構成する突然変異クローンが検出された.4例中2例で,各々,インターフェロン受容体関連ヤヌスキナーゼ1,ヤヌスキナーゼ2をコードする遺伝子(JAK1, JAK2)の耐性関連機能喪失型変異が,野生型アレルの欠失と同時に生じていることが明らかとなった.別の1例では,抗原提示蛋白β2ミクログロブリンをコードする遺伝子(B2M)の短縮型変異が同定された.JAK1, JAK2の変異は,インターフェロンγに対する反応を喪失させ,癌細胞増殖抑制作用に対する非感受性が認められた.B2Mの変異では,主要組織適合複合体クラスⅠの表面発現の喪失がみられた.残りの1例においてはT細胞への獲得耐性に関連する遺伝子変異は同定されなかったが,他の3例と比してベースラインにおける腫瘍細胞のPD-L1発現が低かった.
 本研究により,悪性黒色腫患者での抗PD-1抗体療法に対する耐性獲得の機序の1つに,インターフェロン受容体シグナル伝達と抗原提示が関与する経路の欠損が関連する可能性が示された.

参考文献

Zaretsky JM, et al:Mutations associated with acquired resistance to PD-1 blockade in melanoma. N Engl J Med 375:819-829, 2016

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら