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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科71巻10号

2017年09月発行

文献概要

今月の症例

有棘細胞癌の切除断端に発症したMerkel細胞癌の1例

著者: 藤井麻美1 徳住正隆2 守屋智枝1 周円1 加納宏行1 宮崎龍彦3 福本瞳4 片野晴隆4 清島真理子1

所属機関: 1岐阜大学大学院医学系研究科皮膚病態学 2岐阜県総合医療センター皮膚科 3岐阜大学病院病理部 4国立感染症研究所感染病理部

ページ範囲:P.766 - P.771

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要約 89歳,男性.左示指びらんの生検で有棘細胞癌(squamous cell carcinoma:SCC)と診断され紹介受診.左示指にびらんを伴う58×40mmの紅色局面を認めた.辺縁から1cm離して切除,全層植皮を行ったが植皮片が脱落したため左示指をMP関節から離断した.初回手術から1年9か月後に切除断端および左前腕に皮下腫瘤が多発.生検で真皮から皮下組織に比較的小型で胞体に乏しく,好塩基性の類円形細胞から成る腫瘍細胞巣がみられ,CK20,CD56,synaptophysin,EMA,Merkel細胞ポリオーマウイルス(Merkel cell polyomavirus:MCPyV)陽性,CK7,TTF-1陰性,MIB-1陽性率は90%であった.Merkel細胞癌(Merkel cell carcinoma:MCC)と診断し放射線照射を行ったが,MCC発症から1年6か月後に全身多発転移のため原病死した.初発のSCCはMCPyV陰性であったことから,後に生じたMCCは独立して発症したと考えた.高齢者では日光曝露などの因子を背景として稀ではあるが,複数のタイプの皮膚悪性腫瘍が発生する可能性があり注意が必要である.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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