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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科71巻2号

2017年02月発行

文献概要

今月の症例

経過中に抗デスモグレイン抗体陽性となり診断しえた腫瘍随伴性天疱瘡の1例

著者: 北原博一1 木下(伊勢)美咲1 舩越建1 梅垣知子1 山上淳1 天谷雅行1

所属機関: 1慶應義塾大学医学部皮膚科学教室

ページ範囲:P.104 - P.110

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要約 63歳,女性.初診の約2年前より口腔内潰瘍あり.口腔内潰瘍と同時期に腹部原発の濾胞性リンパ腫Stage Ⅳと診断され,化学療法を行うも腫瘍は残存,副作用のため追加治療を拒否していた.初診10日前より瘙痒を伴う多彩な紅斑・丘疹を略全身に認め,皮膚生検を施行した.組織学的に苔癬型反応があり,抗デスモグレイン3抗体の上昇を認めるも,蛍光抗体法は陰性であった.その後皮膚および粘膜のびらん,水疱が急速に全身に拡大した.再度皮膚生検を施行し,組織学的に表皮の個細胞壊死と苔癬型反応があり,蛍光抗体法陽性,抗デスモグレイン1および3抗体の上昇を認め,腫瘍随伴性天疱瘡と診断した.皮疹の変遷は初期には細胞性免疫が主に働き,のちに液性免疫の付加があったと考えられた.リンパ増殖性疾患の経過中に多彩な紅斑,丘疹,粘膜疹を伴った場合には腫瘍随伴性天疱瘡の可能性を考慮し慎重な経過観察が必要と考えられた.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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