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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科71巻2号

2017年02月発行

文献概要

症例報告

ラジウムによる放射線治療部に生じた基底細胞癌の1例

著者: 真島瑛美1 尾本大輔1 廣正佳奈2 吉岡学1 中村元信1

所属機関: 1産業医科大学皮膚科学教室 2JCHO九州病院皮膚科

ページ範囲:P.161 - P.164

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要約 87歳,女性.1歳時に右顔面血管腫へのラジウム治療歴がある.初診2か月前より右耳輪部のびらんと褐色結節を自覚した.前医での皮膚生検で基底細胞癌と診断され当科紹介受診した.病理組織学的に表皮と連続し周囲と裂隙形成のある腫瘍塊を認めた.びらん周囲の紅斑部では表皮の萎縮,真皮膠原線維束の浮腫,膠原線維の不規則な走行を認めた.右耳介後部基底細胞癌,慢性放射線皮膚炎と診断した.幼児期のラジウム治療が発癌の要因と考えた.慢性放射線皮膚炎上に生じる悪性腫瘍は,重度障害部位には有棘細胞癌が,比較的軽度の部位には基底細胞癌が発生しやすく,いずれも30年前後の潜伏期間があるとされる.ラジウム照射後の皮膚悪性腫瘍にはこれまで9例の報告があり,ほとんどが数十年の潜伏期間の後に生じた基底細胞癌であった.

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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