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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科71巻5号

2017年04月発行

Derm.2017

局所多汗症治療

著者: 大嶋雄一郎1

所属機関: 1愛知医科大学皮膚科

ページ範囲:P.30 - P.30

文献概要

 私が発汗と関わりを持つきっかけは,皮膚科入局時,当大学皮膚科には美容班,PDT班,発汗班があり,教授から君は明日から発汗班でがんばってほしいという一言からであった.発汗班には上級医が1人いて掌蹠多汗症に対するイオントフォレーシス治療を行っていた.その先生に指導されながら局所多汗症治療について学んだ.当初,「汗なんかで本当に困っているのだろうか?」,「汗が多いからって命にかかわる病気でもないし…」と正直思っていた.実際,上級医の先生が掌蹠多汗症,腋窩多汗症患者を診察しているのをみると,患者は「手の汗が多くて,試験のときに紙がフニャフニャになって大変困る」,「脇汗が多く,会議中シャツに汗じみができてないか心配で集中できない」と切実な悩みを持っていることに驚きを感じた.本邦では重度の手掌多汗症患者は約231万人,腋窩多汗症患者は約249万人いると報告され,世の中に汗が多くて困っている患者は大変多いことがわかった.現在,日本皮膚科学会から局所多汗症診療ガイドラインが制定され,①塩化アルミニウム外用療法,②イオントフォレーシス療法,③A型ボツリヌス毒素局注療法,④交感神経遮断術といった治療が確立された.診療アルゴリズムも手掌,足底,腋窩,頭部・顔面と部位別に分類されている.私自身,塩化アルミニウム外用による発汗低下の機序の解明や,重度原発性腋窩多汗症に対するA型ボツリヌス毒素局注療法の治験に参加させていただき,現在本邦でも健康保険で治療が受けられるようになって大変うれしく感じている.
 しかしながら,ガイドラインである程度治療法が確立されているが,「手術以外でもっと汗を抑えてほしい」,「もっと別の治療はないか」といった,患者が十分満足する治療効果が得られないこともしばしばある.今後より簡便で,安全に治療でき,健康保険で行うことができる新しい治療法の開発に少しでも力になりたいと思う.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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