臨床皮膚科71巻8号

2017年07月発行

症例報告

重症虚血肢による皮膚潰瘍に対して経皮的血管形成術後に陰圧閉鎖療法を用いて骨癒合が得られた1例

著者： 安水真規子¹ 黒岡定浩¹ 鶴田大輔²

所属機関： ¹大東中央病院皮膚科 ²大阪市立大学大学院医学部研究科皮膚病態学

ページ範囲：P.583 - P.586

要約　92歳，女性．右下腿と足背に皮膚潰瘍が多発していた．上下肢血流比は右側で0.19と低下しており下肢動脈造影CT画像にて右浅大腿動脈下端から膝下動脈に35mmの完全閉塞がみられ，重症虚血肢による皮膚潰瘍と診断した．経皮的血管形成術を行ったが右足背第I趾中足趾関節と右踵骨が露出した皮膚潰瘍は難治性であった．陰圧閉鎖療法を行い肉芽形成を促した上でデブリードマンと分層植皮を行った．さらに植皮および脱臼していた右足背第I趾中足趾関節の固定に陰圧閉鎖療法を試みたところ，露出していた関節は骨癒合し植皮は生着，下肢の温存が可能であった．関節や骨が露出している潰瘍では切断術が行われることも多いが，今回陰圧閉鎖療法を用いることにより低侵襲で関節固定を行えた．

参考文献

1) 森安麻美，他：臨皮 59:1091, 2005

2) Jones SM, et al:Postgrad Med J 81:353, 2005

3) 倉繁祐太，他：皮膚臨床 55:591, 2013

4) 小山明彦，他：形成外科 43:909, 2000

5) Rozen WM, et al:J Plast Reconstr Aesthe Surg 61:334, 2008

6) Scherer LA, et al:Arch Surg 137:930, 2002

7) Isago T, et al:J Dermatol 30:673, 2003

8) Repta R, et al:Ann Plast Surg 55:367, 2005

9) Blackburn JH 2nd, et al:Ann Plast Surg 40:453, 1998

10) Moisidis E, et al:Plast Reconstr Surg 114:917, 2004

11) Argenta LC, Morykwas MJ:Ann Plast Surg 38:563, 1997

12) 山口智志，田中康仁：関節外科 28:831, 2009

13) Fleischmann W, et al:Unfallchirurg 96:488, 1993

14) 高野祐護，他：骨折 36:S475, 2014