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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科72巻11号

2018年10月発行

文献概要

症例報告

トラベクテジン(ヨンデリス®)の薬液漏れにより胸部右側に広範囲の皮膚潰瘍をきたした1例

著者: 荒井桜子12 東田理恵2 岡林綾2 中川浩一2

所属機関: 1国立病院機構大阪南医療センター皮膚科 2済生会富田林病院皮膚科

ページ範囲:P.853 - P.857

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要約 75歳,女性.子宮肉腫肺転移に対し,中心静脈(central venous:CV)ポートよりトラベクテジンを投与された.投与後3日目までは自他覚ともに合併症なく経過したが,投与4日目から発熱,右前胸部から肩にかけての腫脹疼痛が出現し,補液と冷却にて対応していた.改善がないため当科を紹介され受診した.初診時,胸部右側の広範囲にわたって腫脹しており,紅斑と紫斑が混在していた.CVポート抜去時,膿性排液はなく,本例をトラベクテジンの薬液漏れによる皮膚障害と診断した.その後,ポート抜去部に皮膚潰瘍が出現し,徐々に拡大した.最終的には約17×15cmの筋層に及ぶ潰瘍となった.デブリードマン,陰圧閉鎖療法を行い,全層植皮術にて治癒に至った.文献を渉猟した結果,トラベクテジンは起壊死性抗がん剤であり,血管外漏出が起こると自験例のような重篤な皮膚障害に至る可能性が示された.また,皮膚症状が遅発性に現れることが特徴と考えられた.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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