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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科72巻11号

2018年10月発行

文献概要

症例報告

透析患者に発症した左上肢スポロトリコーシスの1例

著者: 瀬戸山絢子1 岡田悦子1 小田友子1 櫻木友美子1 大森俊1 小林美和2 中村元信1

所属機関: 1産業医科大学病院皮膚科学教室 2こばやし皮膚科クリニック

ページ範囲:P.903 - P.907

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要約 86歳,男性.20年来の血液透析患者であり,自己免疫性膵炎に対しプレドニゾロン(PSL)5mg/日内服中であった.自宅屋内で転倒2か月後,左手背から前腕に膿瘍,潰瘍が多発し複数の抗菌薬治療を受けたが難治であった.病理組織所見では好中球,リンパ球,組織球からなる肉芽腫を形成し,円形の菌要素を確認した.PAS染色とGrocott染色で陽性に染まる菌要素を認めた.ポテトデキストロース寒天培地で黒褐色のコロニー上に灰白色の中央に皺のある湿潤性コロニーを形成し,スライドカルチャーでは細い菌糸と円形で小型の分生子形成を認めた.皮膚リンパ管型スポロトリコーシスと診断し,イトラコナゾール100mg/日の内服と温熱療法で徐々に上皮化した.PCRで原因菌はSporothrix globosaと同定された.血液透析,糖尿病,悪性腫瘍などの免疫不全がある患者に難治性の結節,潰瘍,膿瘍を生じた場合は,土壌と接触歴がなくてもスポロトリコーシスの可能性を念頭に置く必要があると考えた.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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