臨床皮膚科72巻11号

2018年10月発行

症例報告

指間に生じたExophiala jeanselmeiによる黒色菌糸症の1例

著者： 宮下奈月¹ 光井康博¹ 正畠千夏¹ 小川浩平¹ 宮川史¹ 小豆澤宏明¹ 浅田秀夫¹ 伊藤宗一郎² 萬木聡² 桑原理充² 安澤数史³ 望月隆³

所属機関： ¹奈良県立医科大学皮膚科学教室 ²奈良県立医科大学附属病院形成外科 ³金沢医科大学皮膚科学講座

ページ範囲：P.909 - P.915

文献概要

要約　87歳，男性．初診2か月前の農作業中に左第1指間に異物が刺さり，その後同部位に隆起性病変が出現し，増大した．病理組織学的所見では真皮内に肉芽腫性病変と膿瘍を認めた．一部の多核巨細胞内に淡褐色の真菌要素があり，免疫組織化学染色では，PAS染色とGrocott染色陽性の菌糸型の真菌成分や胞子連鎖を認め，黒色菌糸症と診断した．膿汁からの塗抹染色および培養検査で黒色真菌を検出し，さらに，培養形態と塩基配列から本菌をExophiala jeanselmeiと同定した．皮下結節の全摘術を行い，その後再燃を認めなかった．近年，Exophiala属が分子生物学的に再分類され，過去に形態学的にExophiala jeanselmeiと同定されていた原因菌が，別種であった可能性があり，正確な菌種決定，記載には分子生物学的同定法の併用が望まれる．

参考文献

1) 松田哲男，松本忠彦：黒色菌糸症　最新皮膚科学大系，14，中山書店，p273, 2003

2) Zeng JS, et al:J Clin Microbiol 45:3713, 2007

3) McGinnis MR:J Am Acad Dermatol 8:1, 1983

4) Iwatsu T, Miyaji M:Arch Dermatol 120:1209, 1984

5) Ajello L:真菌誌 22:1, 1981

6) 渡辺晋一，他：日皮会誌 119:851, 2009

7) 菊池夕子，他：真菌誌 48:85, 2007

8) 秦　まき，他：皮膚病診療 26:301, 2004

9) Kawasaki M, et al:真菌誌 46:261, 2005