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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科72巻9号

2018年08月発行

雑誌目次

症例報告

水圧式ナイフを用いてデブリードマンを行った重症熱傷の1例

著者: 近藤まや ,   有馬豪 ,   良元のぞみ ,   村手和歌子 ,   岩田洋平 ,   宮嶋尊則 ,   平川昭彦 ,   杉浦一充

ページ範囲:P.660 - P.664

要約 83歳,女性.自宅全焼火災により顔面,四肢,背部に17%total body surface area(TBSA),prognostic burn index(PBI)97.5の熱傷を受傷し当院へ救急搬送された.全身状態が落ち着いた第41病日に水圧式ナイフ(Smith & Nephew社製,VERSAJET Ⅱ®)を用いデブリードマン・植皮術を施行した.水圧式ナイフは高速の水流で創面を洗浄しつつ,壊死・感染組織を切除吸引するデブリードマン機器である.従来のメスによる施術と比較して最小切除深度が非常に浅く,また切除組織の吸引と創部洗浄を同時に行えるため効率的で質の高いデブリードマンが行えた.

第XIII因子製剤が著効したIgA血管炎の1例

著者: 井上明葉 ,   瀬戸山絢子 ,   藤澤聖 ,   廣正佳奈

ページ範囲:P.665 - P.669

要約 27歳,女性.両側大腿から足背の紫斑,下腹部痛,四肢の関節痛を主訴に当科を受診した.病理組織所見と上部消化管内視鏡検査所見からIgA血管炎と診断し,入院の上プレドニゾロン(PSL)30mg/日の全身投与を開始した.治療開始後関節痛は軽快したが,紫斑は消退と再燃を繰り返し腹痛は増悪傾向であった.治療開始10日目に消化器病変を再評価する目的で再度上部消化管内視鏡検査を行ったところ入院時の内視鏡検査でみられた十二指腸下行脚のびらんが増加・増悪していたため,同日からPSL 60mg/日へ増量した.その後も腹痛は改善せず,第XIII因子活性を再度測定した結果39%と低下していた.第XIII因子製剤を3日間投与後腹痛は著明に改善しステロイド漸減後も再燃なく経過した.全身症状を伴う成人IgA血管炎では重症度予測因子として第XIII因子の測定が有効であり,治療の1つとしてXIII因子製剤の投与も検討されるべきである.

高齢発症の若年性側頭動脈炎の1例

著者: 池田智行 ,   筒井清広 ,   牧本和彦 ,   加治賢三

ページ範囲:P.670 - P.674

要約 79歳,女性.初診1週間前より右前額部に軽度の圧痛を伴う弾性硬の皮下結節が出現した.前医を受診し精査目的に当科へ紹介された.初診時,両側の側頭動脈が怒張し右側頭動脈の頭側に弾性硬の皮下結節があった.白血球数,好酸球分画,CRP,血沈は正常値を示した.頭痛,発熱,倦怠感,視力障害などの全身症状なし.表在エコーで,拡張し血管壁が不均一に肥厚した動脈があり,血流がみられた.側頭動脈生検で外膜〜中膜に稠密な肉芽腫様の炎症細胞浸潤を認め,好酸球,リンパ球,好中球および一部に巨細胞から成っていた.動脈壁にフィブリノイド変性,石灰化,弾性板の断裂がみられた.臨床症状,病理組織所見より高齢発症の若年性側頭動脈炎と診断した.無治療で経過観察した.本症は予後の良い疾患であり無治療で経過観察して良いとされるが,高齢発症の報告は少なく今後も症例の集積と検討が必要である.

クロモグリク酸ナトリウムが奏効した線状扁平苔癬の1例

著者: 戸塚みちる ,   長島真由美 ,   秋田亜紗美 ,   佐川展子 ,   岡田里佳 ,   井上雄介 ,   山野朋子 ,   山川有子 ,   蒲原毅

ページ範囲:P.675 - P.679

要約 52歳,女性.初診7か月前より左手関節に瘙痒を伴う皮疹が出現し,手関節から前腕のBlaschko線に沿って線状に拡大した.ステロイド外用薬,レボセチリジン塩酸塩内服による治療で症状が改善せず当科を紹介され受診した.臨床症状と皮膚生検病理組織像から線状扁平苔癬と診断した.パッチテストでニッケル,コバルトが陽性であり,喫煙歴があったこと,歯科金属が挿入されていたことから金属アレルギーの関与を考え,クロモグリク酸ナトリウム内服を開始した.内服後2か月で皮疹は消退した.内服中止後,皮疹の再燃が認められたが,内服再開後,皮疹は軽快した.自験例ではクロモグリク酸ナトリウム投与により腸管粘膜から金属アレルゲンの吸収が抑えられて症状が改善した可能性が推察された.金属アレルギーが関与する線状扁平苔癬に対しクロモグリク酸ナトリウム内服は試みてもよい治療と考えられた.

トラニラストが奏効したannular elastolytic giant cell granulomaの1例

著者: 藤村悠 ,   夏賀健 ,   伊東孝政 ,   青柳哲 ,   清水宏

ページ範囲:P.681 - P.684

要約 67歳,男性.約10年前から両前腕に環状の紅斑を自覚していた.半年前に近医内科で外用剤を処方されたが,改善しないため当科を受診した.両前腕に,径5cm大までの楕円形から不整形,辺縁の色調が強い淡紅褐色局面を数個認めた.病理組織像では,真皮上層に肉芽腫の形成と多核巨細胞による弾力線維の貪食像を認めた.以上からannular elastolytic giant cell granulomaと診断した.トラニラスト内服で治療を開始したところ,皮疹は改善傾向を示した.本疾患に対するトラニラストの奏効例は徐々に報告されてきており,試みる価値のある治療である.

内視鏡下副鼻腔手術後に生じた眼瞼部パラフィン腫の3例

著者: 川島秀介 ,   宮川健彦

ページ範囲:P.685 - P.692

要約 眼瞼部にパラフィン腫を生じた3例についてまとめた.症例は50〜60歳台の女性であり,すべて慢性副鼻腔炎に対して内視鏡下副鼻腔手術後に1日から2か月の経過で左上眼瞼に皮下結節を生じた.病理組織学的所見では,真皮中層から筋層にかけて大小さまざまな空胞構造がみられ,これらを囲むように多核巨細胞,類上皮細胞,単核球を認めた.経過と併せて,パラフィン腫と診断した.内視鏡下副鼻腔手術後の眼瞼部パラフィン腫の発症に関する病態は不明な点が多いが,原因として眼窩紙様板の損傷,術後の出血・血腫,術後鼻腔内へのワセリンガーゼの挿入などが考えられている.過去の報告のまとめから,これらの要因が複合的に関与している可能性が示唆された.術後合併症としての本症が皮膚科医・耳鼻科医に広く認知され,早期診断さらには予防策が講じられる必要がある.

陰囊内硬化性脂肪肉芽腫の1例

著者: 田蒔舞子 ,   飛田泰斗史 ,   浦野芳夫 ,   山下理子

ページ範囲:P.693 - P.697

要約 64歳,男性.1か月前からの陰囊の硬結を主訴に受診した.異物注入や外傷歴はなかった.陰囊中央に無痛性硬結を2か所認めた.組織では真皮深層を中心に大小さまざまな空胞が多数散在し,空胞間に泡沫細胞,リンパ球,好酸球,異物型巨細胞が浸潤していた.病理所見と臨床症状より陰囊内硬化性脂肪肉芽腫と診断した.硬結は生検2か月後に無治療で消退し,5か月後も再発はみられていない.陰囊内硬化性脂肪肉芽腫は,以前は全摘術が行われていたが,自然治癒傾向が明らかとなり,近年の報告では生検後保存的療法が多い.1〜2か月で消失する例が多く,特徴的な形状,組織所見より本症と診断した後は,保存的に経過を見るべきと考えた.泌尿器科からの報告は散見されるが,皮膚科からの報告は稀である.皮膚科医も知っておくべき疾患と考え報告した.

Poroid hidradenomaの2例

著者: 工藤万里 ,   日浦梓 ,   木曽真弘 ,   石浦信子 ,   玉木毅

ページ範囲:P.699 - P.702

要約 症例1:83歳,男性.20年ほど前に左大腿後面の自覚症状のない5mm大の結節に気付く.徐々に増大し50mmほどになったため当院受診.左大腿後面に48×25×40mm大のドーム状に隆起する腫瘤を認め表面平滑で一部,軟に触知した.症例2:71歳,女性.10年前頃より左膝内側の3mm大の結節に気付いたが放置していた.徐々に増大し当院を受診した.左膝内側に25×22×10mm大の皮下結節を認め軟に触知した.病理組織学的に2症例ともporoid hidradenomaと診断した.本邦では本疾患についてdermal duct tumorやsolid cystic hidradenomaの名称で報告されているものもあり,本疾患概念に対する認識が改めて必要と思われたため報告する.

再発や自然消退をみた多発性陰囊疣贅状黄色腫の1例

著者: 星野雄一郎 ,   尾立冬樹 ,   田中勝

ページ範囲:P.703 - P.707

要約 68歳,男性.陰囊に有茎性桑実様紅色腫瘍を2個,その周囲に同色の結節を数個認め受診した.有茎性腫瘍と周囲の結節を切除し,ともに病理組織像にて表皮の乳頭腫状肥厚と真皮乳頭部に泡沫細胞を認め,多発性陰囊疣贅状黄色腫と診断した.4年後,陰囊の別部位に同様の有茎性腫瘍が出現し,病理組織像から疣贅状黄色腫の再発と診断した.さらに4か月後,2か所に丘疹の再発を認めた.初診時と4年後受診時の臨床所見を比較したところ,前回みられた数個の結節は消失しており,自然消退したと考えた.疣贅状黄色腫は単発例が多いが,多発例の報告が増えている.自験例は,4年後に小型病変が自然消退しており,またさらに4か月という短期間での再発を観察できた点が興味深い.

男性乳暈部に生じた皮膚平滑筋腫の1例

著者: 作田梨奈 ,   竹内博美 ,   笹尾ゆき ,   岩原邦夫

ページ範囲:P.709 - P.712

要約 54歳,男性.約1年前より左乳暈部に圧痛を伴う20mm大の皮内結節を自覚した.病理組織像では,真皮内に好酸性の紡錘形細胞が束状に錯綜して増生し,α-SMA,デスミン,ビメンチンが陽性で,皮膚平滑筋腫と診断した.腫瘍細胞はエストロゲン受容体(ER),プロゲステロン受容体(PgR)ともに陽性であった.自験例を含め,ER,PgR染色を施行した過去の症例を集計した結果,8例中5例(63%)でER,PgRともに陽性であった.一方,両者ともに陰性であったのは男性における2例のみであったことから,女性におけるER,PgR発現率のほうがやや高く,女性ホルモンの何らかの影響を受けている可能性が考えられる.本症は稀な疾患であり,今後もER,PgR発現様式の検討や女性ホルモンとの関連を明らかにするために症例の集積が必要と考えた.

免疫抑制患者に発症したMycobacterium abscessusによる播種性非結核性抗酸菌症の1例

著者: 島香織 ,   山上優奈 ,   一ノ名晶美 ,   櫻井弓子 ,   戸田憲一 ,   吉川義顕

ページ範囲:P.713 - P.716

要約 83歳,男性.2005年からリウマチ性多発筋痛症に対しプレドニゾロンの投与を継続していた.さらに,2014年12月からは膿疱性乾癬に対しインフリキシマブを投与していたが,2017年2月に大腸癌が見つかったためインフリキシマブは中止した.同年4月に右手首の皮下腫瘤を自覚し,同年5月には発熱を認め精査加療目的で入院となった.右手首の皮下腫瘤の穿刺液と血液の両者よりMycobacterium abscessusが同定されたが,画像検査では肺や他臓器に病変は確認されなかったため,皮膚から血行性に播種したM. abscessusによる播種性非結核性抗酸菌症と診断し,速やかに抗菌薬多剤併用療法を開始したことで寛解に至った.M. abscessusによる播種性非結核性抗酸菌症は頻度の低い疾患ではあるが,免疫抑制患者やTNF-α阻害薬使用患者においては念頭に置くべき感染症の1つであると考えた.

発疹性黄色腫の1例

著者: 山本亜美 ,   角希里子 ,   天野真希 ,   高橋道央 ,   中島由美 ,   春山興右 ,   沢田泰之

ページ範囲:P.717 - P.721

要約 48歳,女性.2年前に2型糖尿病,脂質異常症を指摘され治療を開始したが,約2か月で治療を自己中断していた.半年前より黄色結節が多発したため当科を受診した.初診時,臀部,四肢には数mm大程度,手掌には約1cm大までの黄色結節が多発していた.採血検査にて,HbA1c 14.4%,総コレステロール668mg/dl,LDL-コレステロール88mg/dl,トリグリセリド5,616mg/dlと高値を認めた.右手掌,右臀部から皮膚生検を施行し,病理組織像で真皮に泡沫細胞を認め,臨床症状と合わせて,2型糖尿病による二次性のV型脂質異常症に伴う発疹性黄色腫と診断した.内科的治療に伴い,黄色結節は2か月程度で色素沈着を残して平坦化した.発疹性黄色腫は高カイロミクロン血症および高TG血症に伴って出現し,コントロール不良の糖尿病に伴うことが多いため,脂質異常症や糖尿病の悪化の発見に役立つ重要な皮膚所見である.

臨床統計

患者背景からみた水疱性類天疱瘡—当科に入院した患者40人の検討

著者: 黒田桂子 ,   大谷稔男

ページ範囲:P.723 - P.727

要約 2011年1月〜2017年8月に,水疱性類天疱瘡の患者40人が当科に入院した.性別の内訳は,男性21人,女性19人で,75歳以上の後期高齢者の占める割合が高かった.男性11人,女性2人で脳血管障害が,男性3人,女性11人で認知症が併存した.悪性腫瘍の既往歴のある患者が11人いたが,水疱性類天疱瘡の診断時には,いずれも治癒していた.当科入院中,新たに悪性腫瘍が発見された患者もいなかった.添付文書の副作用欄に水疱性類天疱瘡が記載されている薬剤を16人が服用していた.そのうち,10人がdipeptidyl peptidase-4(DPP-4)阻害薬を服用していたが,DPP-4阻害薬により水疱性類天疱瘡を発症したか否かは明らかでなかった.40人中2人は入院中に死亡し,10人は当科を退院後,他院や介護施設に移っていた.水疱性類天疱瘡は高齢者に多いのみならず,脳血管障害や認知症の併存率が高い可能性があり,地域や医療スタッフ,家族との連携を深める必要がある.

治療

乳児血管腫に対する早期ドライアイス圧抵法の有効性の検討

著者: 加藤真梨子 ,   山田大資 ,   上田朋子 ,   坂元陽美 ,   尾松淳 ,   杉田美樹 ,   荒木麻由子 ,   吉崎麻子 ,   佐藤伸一

ページ範囲:P.729 - P.734

要約 乳児血管腫に対するドライアイス圧抵法の効果を検討した.2014〜2016年に当科で生後1〜4か月の間に乳児血管腫に対してドライアイス圧抵法を開始した12例13病変を対象とした.1回あたり0.6〜2秒で,1〜3回圧抵を2〜3週間隔で行った.結果は増殖期終了月齢が,生後1か月1病変,生後3か月5病変,生後4か月2病変,生後5か月2病変,生後6か月3病変であった.全病変で増殖期が生後6か月までとなった.自然経過では増殖期は1歳〜1歳6か月程度のことが多く,全例でドライアイス圧抵法により増殖期が短縮できた可能性が示唆された.

マイオピニオン

皮膚科学教室の新規立ち上げ

著者: 菅谷誠

ページ範囲:P.658 - P.659

 1. 国際医療福祉大学の沿革
 国際医療福祉大学医学部は成田の国家戦略特区を利用し,2017年4月にスタートした.小生はその初代教授として赴任したわけであるが,大学自体は決して「新設医大」ではない.1995年4月栃木県大田原市に,国際医療福祉大学保健学部(看護,理学・作業療法,言語聴覚,放射線・情報科学)を開学しており,すでに23年の歴史を持つ大学である.2005年4月大田原市に薬学部,福岡県大川市にリハビリテーション学部を開設,2009年4月福岡県福岡市に福岡看護学部を開設するなど,栃木県と福岡県を中心に大学の規模を拡大してきた.2016年4月には千葉県の成田キャンパスに,成田看護学部,成田保健医療学部が開設された.そして翌年には念願の医学部がスタートした.すでに医療関連の学部の歴史が長く,太田原,塩谷,熱海,三田,市川に5つの大学病院を持っている.老人ホームやリハビリセンターなどの関連施設も多く,多様な実習を行うことができる.

連載 Clinical Exercise・132

Q考えられる疾患は何か?

著者: 福屋泰子

ページ範囲:P.655 - P.656

症例
患 者:56歳,女性(看護師)
既往歴:33歳時,両腋窩に水疱,びらんを伴う皮疹が出現し,近医で生検を受けたことがある.その後10年間はほとんど皮疹はなく経過している.
現病歴:初診の1か月前より臀部に紅斑が出現し,びらんとなって拡大したため,勤務先の皮膚科を受診し,吉草酸ベタメタゾン軟膏をリント布に伸ばして貼付する処置を行った.その後は自己判断で処置を行っていたが,皮疹がさらに拡大したため,当科を受診した.
現 症:両腋窩,大腿内側,肘窩などの間擦部位に,びらんと亀裂を伴い浸軟した紅斑局面を認めた(図1).臀部,両大腿後面,下腿後面にも広範囲にびらんと紅斑を認めた(図2,3).局面上およびその周囲には膿疱が散在していた.鏡検で真菌は陰性であった.

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目次

ページ範囲:P.651 - P.651

欧文目次

ページ範囲:P.653 - P.653

文献紹介 悪性黒色腫に対するモノベンゾンとイミキモド外用療法は抗悪性黒色腫免疫を誘導し,皮膚転移巣の縮小が得られる

著者: 平井郁子

ページ範囲:P.692 - P.692

 免疫療法中の悪性黒色腫患者における白斑様脱色素斑の出現は,好ましい予後の徴候であり,メラノサイトないし悪性黒色腫抗原に対する免疫が効率よく誘導されていることを意味する.著者らは抗メラノサイト免疫を誘導する汎発性白斑治療薬のモノベンゾンと,Toll様受容体アゴニストであるイミキモドとを併用し,抗悪性黒色腫免疫の誘導と,腫瘍縮小効果を評価すべく,単相,第Ⅱ相試験を行った.
 対象は切除不能な多発皮膚転移巣を有するstage ⅢC〜Ⅳ期の悪性黒色腫患者で,皮膚転移巣と周囲の皮膚に対して12週間以上のモノベンゾンとイミキモドの併用外用療法(MI療法)を行った.21例が12週間の治療評価対象となった.その結果,MI療法の忍容性は良好で,皮膚転移部の部分奏効(PR)は8/21例(38%),安定(SD)は1/21例であった.また,12週以降の継続治療期を含めた最良奏効率は52%(11/21例)で,これには3例の完全奏効(CR)が含まれた.7/21例において非外用部位の白斑様脱色素がみられた.さらにMART-1,gp100,チロシナーゼなどのメラニン分化抗原に対する特異的抗体は7/17例で,抗原特異的CD8 T細胞の誘導は11/15例において確認された.これらの全身性免疫応答は,PR群においてベースラインと比較して治療中に有意に増加した.

書評 —編:鶴田 大輔—皮膚科レジデントマニュアル

著者: 大山学

ページ範囲:P.735 - P.735

 本書の最大の特徴は,巻頭に書かれているように鶴田大輔教授のもと阪市大皮膚科の御一門が“総力を結集して”作り上げたところにある.こと皮膚科に限らず一般に研修医・専攻医向けのマニュアルは分担執筆されたものも多く,章ごとのフォーマット自体はそろっているものの,項目ごとの重み付けや記載の細やかさが異なり,やや統一感に欠けるものも少なくない.長年「同じ釜の飯を食った」先生方が執筆されたことや,諸事にこだわりのある(良い意味で!)鶴田教授の目が細部にまで行き届いていることもあって,あたかも単著本のように,どのページを取り出して読んでも一貫したポリシーが感じられ,かつ密度の高い“特上のドライフルーツケーキ”のような一冊ができあった.ここまでされても,あえて「大阪市立大学皮膚科学マニュアル」などとしないところがいかにも鶴田教授らしいと好感を持った.
 特に高く評価したいのは,約1/3弱を皮疹の診かた,検査,治療,使用頻度の高い病勢スコア表,パッチテスト成分や薬疹のまとめに割いた構成である.この手のマニュアルではよりコンパクトにしようとするあまり簡潔にまとめられがちな項目が丁寧に記載されている.実は臨床研修において本当に必要とされ,繰り返し見返すのは疾患の各論ではなくこうした情報なのだ.「実にわかっておられる」と感心した.

書評 —編:日本皮膚科学会—実践!皮膚病理道場2—バーチャルスライドでみる炎症性/非新生物性皮膚疾患[Web付録付]

著者: 清島真理子

ページ範囲:P.736 - P.736

 『実践!皮膚病理道場—バーチャルスライドでみる皮膚腫瘍』に続いて『実践!皮膚病理道場2—バーチャルスライドでみる炎症性/非新生物性皮膚疾患』が発刊されました.
 この本の特徴は,(1)バーチャルスライドを操作して自分のペースで学べる点と(2)難易度別に基本的レベルのA,応用レベルのB,難易度のやや高いCの3段階に区分されている点です.

次号予告

ページ範囲:P.737 - P.737

あとがき

著者: 玉木毅

ページ範囲:P.740 - P.740

 どこでもそうだろうが当院でも,「患者様」という言葉が使われるようになった頃からさまざまな接遇研修が行われてきた.当初接遇といえば一流ホテルや飛行機の客室乗務員というイメージだったのか,リッツカールトンやJALの関係者による研修が行われた.例えばリッツカールトンでは常連客の客室内の過ごし方の癖に合わせてソファとテレビの配置を微妙に変える等々の話を聞き,なるほどとは思うものの,「ラグジュアリー世界の話を医療現場に?」という違和感を拭えなかった.最近はちょっと変わってきており,「おじぎは背筋を伸ばして45度」というような,表面的・枝葉末節・体育会的なものから,より現実的な現場の視点に立ったものになってきている.
 医療以外の世界では従来から,この「表面的・枝葉末節・体育会的」な接遇が「おもてなし」としてはびこり,近年逆にひどくなっているような気がする.東洋経済のオンラインで最近,「日本は『感情労働者』を搾取しすぎている」という記事を見かけた.感情労働とは,例えば,笑いたくないのに笑顔を見せるなど,自分が本来抱く感情とは別の感情を表出させなければならない労働のことで,ホテル従業員や客室乗務員などを典型とするが,こうした「おもてなし業」以外にも感情労働を求められる職種は拡がっており,医療や介護の分野もその1つとされる.過度な感情労働の強制は労働者の精神や肉体に悪影響を及ぼして現場を疲弊させ,離職等により人手不足に拍車をかける.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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