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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科73巻1号

2019年01月発行

症例報告

向精神薬の過鎮静により治療に難渋した多発褥瘡の1例

著者: 吉岡未里1 稲福和宏1 竹下郁伶1 重原岳雄2 有川理紗2 小林圭一3 今野日登美4 中島香寿代4

所属機関: 1国保直営総合病院君津中央病院皮膚科 2国保直営総合病院君津中央病院形成外科 3木更津病院精神科 4国保直営総合病院君津中央病院看護部

ページ範囲:P.13 - P.18

文献概要

要約 26歳,女性.4年前に自殺企図し8種類の向精神薬を内服していた.当科受診の約2か月前より自宅で寝たきりの状態となり仙骨部褥瘡が発生.初診時,仙骨部中央に直径6cmのポケットを有する褥瘡を認めた.通院中に大転子部,踵部にも褥瘡が発生し入院となった.同時に消化管穿孔を認め穿孔部閉鎖術と人工肛門造設を行った.褥瘡はデブリードマン,陰圧閉鎖療法の後,仙骨部は大臀筋皮弁,大転子部は縫縮術にて治癒した.若年にもかからず褥瘡が重症化した原因にうつ病に対しての向精神薬の多剤併用による過鎮静が考えられた.向精神薬の多剤併用は副作用の錐体外路症状や過鎮静となるリスクが高く褥瘡発生のリスクも上がる.自験例では入院後,適切なケアに加えて向精神薬を減量できたことで全身状態の改善と褥瘡の治療が可能となった.精神疾患を有する患者において早期からの褥瘡予防処置とともに精神科医との連携による薬剤の適正使用がきわめて重要である.

参考文献

1) 武田利明,他:褥瘡会誌 17:58, 2015
2) 稲垣 中,稲田俊也:臨床精神薬理 9:1443, 2006
3) 稲垣 中,稲田俊也:臨床精神薬理 9:1859, 2006
4) 長嶺敬彦:最新精神医学 15:185, 2010
5) 助川鶴平:精神誌 114:696, 2012
6) Mizokami F, et al:J Dermatol 43:436, 2016

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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