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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科73巻10号

2019年09月発行

症例報告

プロピルチオウラシル内服によるANCAの上昇が病態に関与したと考えられた下腿潰瘍の1例

著者: 菅野莉英1 鎌田麻子1 近祐次郎2

所属機関: 1砂川市立病院皮膚科 2砂川市立病院内科

ページ範囲:P.757 - P.761

文献概要

要約 82歳,女性.1984年に甲状腺機能亢進症診断後より,プロピルチオウラシル(PTU)内服中であった.2017年7月初旬,下腿に紫斑と赤色丘疹が出現,紫斑は急速に潰瘍化し,各種治療に反応しなかった.8月末の血液検査で抗好中球細胞質抗体(antineutrophil cytoplasmic antibody:ANCA)陽性となり,長期にわたるPTU内服歴があることから,PTUによるANCA上昇が病態に関与したと考えられた皮膚潰瘍と診断した.プレドニゾロン(PSL)30mg/日を内服開始したところ,潰瘍は急速に上皮化し,PTU中止によりANCAも低下した.PTUは抗甲状腺薬として使用される薬剤であるが,比較的高率にANCAを誘導し,一部で薬剤誘発性ANCA関連血管炎を引き起こす.PTU誘発性ANCA関連血管炎は薬剤の中止により予後良好な経過を期待できる疾患だが,その頻度は比較的稀で,かつ内服から発症までの期間に相関性がないことから関連が察知されにくい.そのため難治性皮膚潰瘍の鑑別疾患としてこの疾患を認識しておくことが重要である.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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