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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科73巻11号

2019年10月発行

文献概要

症例報告

ドクササコ摂取による肢端紅痛症の1例

著者: 渡部絢子1 牛上麻希1 藤井俊樹1 望月隆1 橋本貴美子2

所属機関: 1金沢医科大学皮膚科学講座 2東京農業大学生命科学部分子生命化学科

ページ範囲:P.857 - P.862

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要約 78歳,男性.11月初旬より手足に疼痛が出現.徐々に増悪したため当科を受診した.初診時,四肢末端に紅斑腫脹と激しい接触痛を訴え,摂食や自力歩行が困難であった.再度の問診で症状出現数日前にドクササコを摂取したことが判明.臨床経過と合わせ,ドクササコ摂取による肢端紅痛症と診断し,ニコチン酸アミド900mg/日の内服を開始した.症状は約1か月で軽快した.入院中に施行したサーモグラフィーでは,患者の手足の表面温度は健常人と比較し約2℃高かった.また高温を示す部位は接触痛やしびれ感を認める部位と一致していた.ドクササコ中毒は潜伏期が長く,消化器症状が強くないことから,初診時にはキノコ中毒の可能性を疑いにくい.疾患に対する理解と詳細な病歴聴取が重要である.また毒キノコによる食中毒は保健所への届け出が義務づけられている.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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