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あとがき
著者: 戸倉新樹
所属機関:
ページ範囲:P.1024 - P.1024
文献購入ページに移動 みなさんは空港を走ったことがあるだろうか.私は何度かあるが,最近わがフライト人生で1,2を争う体験をした.9月の第3週に欧州研究皮膚科学会(ESDR)がボルドーであり,「ワインワイン」と呟きながらいそいそと出掛けた.第4週にはニューヨークというかハドソン川対岸のニュージャージーで化粧品香料の安全性に関する会議があったため,直接ボルドーからマドリードの空港を経由してジョン・F・ケネディ国際空港(JFK)に行く経路を選んだ.2週間の予期せぬ危機に対応できるように手荷物のみにし,ほぼ毎日ホテルでの洗濯を決め込んだ.さてこの大西洋横断はイベリア航空である.ボルドーの空港で搭乗券をもらう際,マドリードからJFKまでの発券をしてくれなかった.「乗り継ぎ先でもらえ」というのは時々ある.しかしこれがトラブルになることがままあることは経験してきた.乗り継ぎ時間は1時間と少ししかなく,嫌な予感がしたので,マドリード空港での発券所は簡単に見つかるか尋ねた.「イージィ」.この答えは,「自分は知らない」と同義語である.案の定,マドリードに着いたら,発券場所をたらい回しにされた.3つ目のカウンターで,中年女性が何やらゴチャゴチャとキーボードを叩いて操作した挙句,諦めて渡された搭乗券は,何と,手書きであった.搭乗口の番号さえ判別できない下手な字.「何番か?」「48」ええ!ここは7なのでほとんど端から端まで移動しなければならないではないか.時間がない.「急げ!」と言われ,キャリーバッグを転がしながら走った.搭乗口48に着くと,検問された.ハアハア息をする仏頂面の東洋人がフランスからスペインを経由してニューヨークに行くとなると,ますます怪しいと思ったらしい.「お前は米国のビザを持っているはずだ」「いやない」.「米国に住んでいるだろ」「いや,日本に帰る」.「なら米国で泊まるホテルの証拠を見せろ」.パソコンを開いて予約証を見せ,やっと信じてもらえた.と思ったら,別室に案内され.キャリーバッグを開けられ,麻薬のリトマス試験紙で検査された.這々の体で飛行機に乗り込んだが,最後の搭乗者であった.汗はなかなか引かず,シートに体を預け,しばしイベリア航空機内のCAを見つめていた.綺麗な女性でも,たまには般若に見えることを実感した.
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