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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科73巻2号

2019年02月発行

文献概要

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あとがき

著者: 石河晃

所属機関:

ページ範囲:P.188 - P.188

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 働き方改革の波が医療界に押し寄せてきています.読者の皆様の勤務時間はどのくらいでしょうか.勤務医,特にレジデントの場合には,外来,病棟診療はもちろんのこと,各種書類作成,臨床写真整理,レセプトチェックなどのさまざまな業務に追い回されていることと思います.さらに,これに加えてカンファレンス準備,学会発表,学会出席,講習会聴講,論文作成も必要であり「自己研鑽」として勤務時間にカウントされない部分が存在します.この「自己研鑽」は専門医を取得するのに必須であるとともに,専門医取得後もそれを怠ると,最新の医学から後れを取る恐れがあります.「自己研鑽」は自分を高めるために行う努力のことですが,実は医師自身のためというよりは,患者さんのために行われていることなのです.日本の医療は医師の献身的「自己研鑽」により高い水準を保っているのが現状です.しかし,自分の能力を高めるために要する時間は報酬の対象になっていません.一方で,複数の診療科を受診すると1科当たりの診察料が安くなることや,フォロー中の患者が別の病気を発症して新規治療を開始しても,初診料が取れないことなど医師の診療技術に関する評価は納得できない部分があります.皮膚科専門医が足底の黒色斑を診察し,「自己研鑽」で鍛えた能力を駆使してメラノーマを鑑別したとしても,非皮膚科医が診察した場合と診察料は変わりません.全医師一律の料金体系は寿司屋に例えれば一流高級店のマグロと,100円均一回転寿司店のマグロに同じ値段をつけるようなものです.一流高級店に人が殺到するのは火を見るよりも明らかです.「神の手」を持つ外科医もしかり,能力を高めた者ほど過剰労働の危機に瀕してしまうのはとても皮肉なことです.「自己研鑽」を労働ではない,として切り捨てるのではなく,この部分をいかに評価し,いかに手当してゆくか,非常に重要な課題だと思います.私個人的には「自己研鑽」を勤務時間とするかどうかは不毛な議論であり,研鑽して得られた技能にインセンティブを付けることこそ必要なことだと思っています.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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