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Derm.2019
皮膚科医の醍醐味
著者: 山口由衣1
所属機関: 1横浜市立大学医学部皮膚科学教室
ページ範囲:P.16 - P.16
文献購入ページに移動 3年ほど前から大学近くの循環器呼吸器専門病院に外勤に行っている.膠原病関連の新規治験の分担者として行くことになったのだが,それを機に,間質性肺炎の専門家である副病院長が「皮膚膠原病外来」を立ち上げてくださった.そこで診る患者さんは,「間質性肺炎(interstitial pneumonia:IP)ありき」の方々で,肺組織の病理像や血液検査所見から膠原病を疑う要素が少しでもあれば併診されてくる.自分が大学の膠原病外来で診る患者層との違いに気づかされることが多く,非常に興味深い.IPがあり全身性強皮症の特異抗体陽性だが,皮膚所見のないsine sclerodermaを初めて診断した.また,セントロメア抗体陽性で強皮症のない方々は珍しくはないが,IPのみがある患者層にはあまり出会ったことがなかった.さらに,抗ARS抗体陽性IP患者はあまりに多く驚くが,メカニックスハンドを認めることは珍しくないものの,多くは他の所見を欠き,皮膚筋炎とは診断できない.時に,典型的な皮膚筋炎や強皮症,全身性エリテマトーデス,全身性血管炎などを見つけ出し,主治医と議論できると自分の存在価値を感じる.膠原病は多診療科が関与すべき分野であり,オーケストラ診療が理想である.皮膚科医の醍醐味は,皮膚症状から全身性疾患を見つけ出すこと,皮疹を正しく診断し病勢との関連を議論すること,そして個々の患者にとっての最良の予後改善を目指して治療に積極的に関与することである.自分の常識にとらわれず,疾患の全体像を把握するための自己研鑽を大切に,皮膚科医として時にオーケストラ診療の指揮をとっていきたい.
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