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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科73巻5号

2019年04月発行

文献概要

Derm.2019

脳内報酬系

著者: 石氏陽三1

所属機関: 1東京慈恵会医科大学皮膚科学講座

ページ範囲:P.104 - P.104

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 私,音楽好きである.オールジャンル聴くが特にロックミュージックが好きである.中学生時代にJimi Hendrixに憧れ,将来,ギタリストになると決心した.しかし,ギターの腕も身長も伸びずに泣く泣く断念した.それでも,音楽好きは続き,大音量で音楽を聴いていたため,騒音性難聴にもなったこともある.ほぼ,毎日なんらかの音楽を聴き,頭の中では常に音楽が鳴っている.そのように音楽を聴いて心地良いと感じたときには,脳内で報酬系といわれている部位が活動する.音楽を聴いているとき,間違いなく私自身の報酬系も活発になっていると思っている.
 連日,外来でかゆみのある患者さんの診察をする.皮膚病変はそれほど重症でないにもかかわらず,かゆみが強い患者さんがいる.また,かゆい部位を引っ掻くと気持ち良く感じるため,掻破行動を止められない患者さんもいる.近年,脳機能画像研究が進み,この掻くと気持ち良く感じているときに,脳内の中脳腹側被蓋野(ventral tegmental area:VTA)や側坐核(nucleus accumbence:NAc)などのドパミン神経を中心とした報酬系と呼ばれる部位が主要な役割を果たしていることが明らかにされた.これは,私が音楽を聴いているときと類似した脳の状態であると言える.また,薬物,アルコール,ギャンブルや過食など他の中毒も同様に報酬系が関与していることが証明されている.患者さんにとっての掻破は,私にとっての音楽かもしれない.「音楽を聴くな」と言われるのは私自身とても辛い.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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