臨床皮膚科73巻6号

2019年05月発行

症例報告

動眼神経麻痺をきたした帯状疱疹の1例

著者： 千々和智佳¹ 田中隆光¹ 林耕太郎¹ 深谷早希¹ 石川武子¹ 鎌田昌洋¹ 大西誉光¹ 河村保臣² 多田弥生¹

所属機関： ¹帝京大学医学部皮膚科学講座 ²帝京大学医学部脳神経内科学講座

ページ範囲：P.429 - P.433

要約　70歳，男性．初診の3日前から右鼻背部，眼瞼，側頭部に有痛性皮疹が出現し，2日前から眼瞼浮腫のため開眼困難となった．同部に紅暈を伴う小水疱が集簇していた．眼科診察では角膜潰瘍，結膜充血を認めた．ビダラビンを5日間点滴し皮疹は痂皮化した．ビダラビン投与終了8日後に，眼瞼浮腫はやや改善し開瞼障害が明らかとなり，上転・下転・内転障害と縮瞳異常を認めた．MRIでは下直筋に信号上昇を認めた．メチルプレドニゾロン1gを3日投与し，続けてプレドニン50mg内服とし，適宜漸減し54日間で終了し神経症状は改善した．帯状疱疹に伴う外眼筋麻痺では，早期から麻痺が併存し眼瞼浮腫などで症状がマスクされている例もあり慎重な診察と十分な経過観察が必要である．また，開眼困難例では，動眼神経麻痺による眼瞼下垂の可能性も考慮し，眼球運動障害の有無を積極的に調べる必要がある．

参考文献

1) 田辺健一，他：臨皮 61:895, 2007

2) 角村由紀子，他：臨皮 68:249, 2014

3) 楠葉展大，他：皮膚病診療 33:1145, 2011

4) 河崎真理奈，他：皮膚臨床 58:1452, 2016

5) 河内繁雄，他：皮膚臨床 58:1962, 2016

6) 松原きみ子，他：皮膚病診療 39:267, 2017

7) 井上あい，他：臨眼 53:987, 1999

8) 奥田浩人，他：皮膚臨床 51:1224, 2009

9) 濱田理恵，他：皮膚臨床 47:249, 2005

10) 長島弘明，他：皮膚臨床 34:1776, 1992

11) 松本涼子，他：臨神経 46:71, 2006

12) 青田典子，他：臨皮 62:220, 2008

13) 佐藤里奈，他：臨眼 62:1279, 2008

14) 小森敏史，他：皮膚臨床 51:1231, 2009

15) 栗本拓治，他：眼科 49:991, 2007

16) 加藤円香，他：臨皮 67:543, 2013

17) 中澤　徹，他：臨眼 52:1933, 1998

18) 柳　昌秀，他：眼臨紀 2:578, 2009

19) 西谷元宏，他：日眼紀 53:898, 2002

20) 漆畑　修：臨皮 49(増刊):164, 1995