臨床皮膚科73巻8号

2019年07月発行

症例報告

デノスマブ投与中の患者に発症した水疱性類天疱瘡の1例

著者： 赤芝知己¹² 関根万里²

所属機関： ¹東邦大学医学部皮膚科学講座 ²東京都保健医療公社荏原病院皮膚科

ページ範囲：P.597 - P.602

要約　80歳，女性．初診8か月前に近医にて骨粗鬆症治療薬であるデノスマブ60mgを初めて皮下注射したところ，胸部に皮疹がみられ，1か月前に再投与したところ全身に水疱を伴う皮疹が出現したため，当科を受診した．初診時，軀幹・上肢・下腿に紅斑を伴う大小様々な不整形のびらん，痂皮，血痂が多発．手掌には小豆大までの緊満性水疱が散在していた．血液検査では抗BP180抗体が104U/mlと上昇．病理組織は表皮真皮境界部に軽度の液状変性，表皮直下に水疱，水疱内に好酸球の浸潤がみられた．蛍光抗体直接法では表皮真皮境界部にIgGとC3が線状沈着しており，水疱性類天疱瘡と診断した．なお，薬剤リンパ球刺激試験は施行できず，再投与試験も行えなかった．プレドニゾロン投与にて軽快し，漸減中である．デノスマブ60mgは2013年の本邦承認後，BPを伴ったとする報告はなく，今後整形外科領域での使用が増えると考えられるため報告する．

参考文献

1) Theill LE, et al:Annu Rev Immunol 20:795, 2002

2) Naidoo J, et al:Cancer Immunol Res 4:383, 2016

3) 北村正樹：耳鼻展望 59:47, 2016

4) 高見正道：日本臨床免疫学会会誌 36:162, 2013

皮下注60mgシリンジ，インタビューフォーム

6) Nitta T, et al:Curr Opin Immunol 23:190, 2011

7) Roberts NA, et al:Immunity 36:427, 2012

8) 岡本一男，高柳広：領域融合レビュー 1:e003, 2012

9) Ferrari-Lacraz S, Ferrari S:Osteoporos Int 22:435, 2011

10) van de Winkel JG and Anderson CL:J Leukoc Biol 49:511, 1991