icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科73巻8号

2019年07月発行

文献概要

症例報告

多数の衛星病巣を伴い拡大した右上腕皮膚原発腺様囊胞癌の1例

著者: 齊藤優子1 吉田哲也2 川北梨乃2 大井裕美子1 佐々木優2 吉山晶3 落合博子4 福田知雄1

所属機関: 1埼玉医科大学総合医療センター皮膚科 2独立行政法人国立病院機構東京医療センター皮膚科 3独立行政法人国立病院機構東京医療センター整形外科 4独立行政法人国立病院機構東京医療センター形成外科

ページ範囲:P.627 - P.631

文献購入ページに移動
要約 74歳,女性.2年前に出現した右上腕の皮下結節を主訴に当科受診.初診時,右上腕内側に自覚症状のない拇指頭大,有茎性の軟らかい紅色結節を認め,その周囲に小豆大までの硬い皮下結節を多数触知した.皮膚生検の結果より,皮膚原発腺様囊胞癌(primary cutaneous adenoid cystic carcinoma:PCACC)と診断した.外科的切除を試みたが,衛星病巣が広範囲に拡大していたため根治的切除には至らず,手術は切除断端全方位陽性の姑息的病巣切除となった.腺様囊胞癌(adenoid cystic carcinoma:ACC)は唾液腺での原発が最も知られており,予後は原発の部位によって異なる.PCACCは比較的稀なACCで,唾液腺原発のものに比べて予後が良いとされている.PCACCは頭皮や胸部に好発し,上腕での発生はきわめて稀である.自験例は切除断端陽性であったが,追加切除せず経過観察とし,その後の経過も良好である.ACとPCACCは予後の差が大きく,別疾患として扱うべきではないかと考える.特に治療においては,後者の予後が良好なことから,必ずしも大がかりな手術を行う必要はなく,経過をみるのも1つの選択肢ではないかと考えた.

参考文献

1) Boggio R:Arch Dermatol 111:793, 1975
2) Fehr A, et al:J Pathol 224:322, 2011
3) North JP, et al:Am J Surg Pathol 39:1347, 2015
4) 高橋 基,他:臨皮 60:479, 2006
5) Rocas D, et al:Am J Dermatopathol 36:223, 2014
6) 工藤英樹:形成外科 54:1299, 2011
7) Ramakrishnan R, et al:Am J Surg Pathol 37:1603, 2013
8) Naylor E, et al:J Am Acad Dermatol 58:636, 2008
9) 柴田 大,他:日形会誌 31:697, 2011
10) 山田忠明,他:癌と化療 37:1545, 2010
11) Kato N, et al:Am J Dermatopathol 20:571, 1998
12) Dores GM, et al:J Am Acad Dermatol 63:71, 2010
13) Wysocki PT, et al:Oncotarget 7:66239, 2016

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?