icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科73巻9号

2019年08月発行

雑誌目次

今月の症例

耳後部に生じた壊疽性膿皮症の1例

著者: 車谷紋乃 ,   藤田英樹 ,   照井正

ページ範囲:P.662 - P.666

要約 60歳,男性.約1年前に左耳後部にかさぶたを自覚した.1か月間抗菌薬含有軟膏を外用したが改善せず,当科を受診した.左耳後部に辺縁が堤防状に隆起する10×5mmの潰瘍があり,周囲に発赤を伴っていた.病理組織像で,真皮全層にリンパ球や組織球を混じる稠密な好中球の浸潤と膠原線維の変性がみられた.一般細菌,真菌,抗酸菌培養は陰性であった.精製白糖・ポピドンヨード外用を開始したが,次第に潰瘍は辺縁が堤防状,蛇行状を呈しつつ遠心性に拡大し,耳垂にまで及んだ.臨床所見と経過から壊疽性膿皮症と考え,クロベタゾールプロピオン酸エステル軟膏外用を行い潰瘍は約1か月で上皮化したが,発赤・排膿が再燃しプレドニゾロン内服を開始し軽快した.全身検索を施行し合併症はなかった.自験例は壊疽性膿皮症の好発部位以外の単発性潰瘍であり,診断に難渋した.原因不明の難治性潰瘍では部位を問わず壊疽性膿皮症も考慮するべきと考えた.

症例報告

ワルファリンカリウム内服中に抗菌薬を投与され左下腿内側のdeep dissecting hematomaによる出血性ショックをきたした1例

著者: 小熊玲奈 ,   稲福和宏 ,   竹下郁伶

ページ範囲:P.667 - P.672

要約 85歳,女性.難治性両下腿浮腫に対し,深部静脈血栓症予防目的にワルファリンカリウムを内服していた.当科受診4日前に増悪した右足背の腫脹・滲出液に対し,前医にて蜂窩織炎の診断となり,セフカペンピボキシル塩酸塩水和物の内服が開始された.当科受診当日,左下腿に腫脹と疼痛を自覚し救急要請した.搬送中に同部の急激な増大と皮膚の破裂をきたし,出血性ショックとなった.当院到着後,救急救命科により初期蘇生された.CT画像所見において出血部位の皮下に巨大血腫が確認された.保存的加療により血腫直上の皮膚は壊死となり,治療として外科的デブリードマンによる血腫除去術と分層植皮術を施行した.自験例を深在性解離血腫(deep dissecting hematoma:DDH)と診断した.DDHは初期には丹毒や蜂窩織炎と認識されることが多く,診断には出血素因,内服歴などの問診や皮膚脆弱性の観察が重要である.治療では血腫除去が遅れると広範な皮膚壊死をきたすため,早期に外科的処置による血腫除去が望まれる.

Sneddon症候群の1例

著者: 宮本花里奈 ,   林綾乃 ,   北口正孝 ,   筑後孝章

ページ範囲:P.673 - P.679

要約 31歳,女性.2009年10月に前腕の痺れと筋力低下,下腿に網状皮斑が出現.脳神経内科を受診し,頭部MRIで脳梗塞を認めた.2010年10月に複視が出現した.2017年11月に四肢および腰背部の網状皮斑が増悪し,当科を紹介され受診した.下肢の網状皮斑部の病理組織学的検査では真皮・皮下脂肪織境界部の小動脈の閉塞,内膜の著明な肥厚とフィブリノイド変性,外膜にリンパ球浸潤を認めた.以上よりSneddon症候群と診断した.抗カルジオリピン抗体,ループスアンチコアグラントはともに陰性であった.寒冷時に網状皮斑の増悪を繰り返すが,抗血小板薬および抗凝固薬を内服し,頭部MRIでは脳梗塞再発の徴候はない.若年女性の網状皮斑を診た場合,Sneddon症候群を念頭に置いて積極的に皮膚生検や頭部MRIを行うべきである.

ゲフィチニブによる紫斑型薬疹の1例

著者: 竹内いづみ ,   竹内紗規子 ,   馬場裕子 ,   稲積豊子

ページ範囲:P.681 - P.686

要約 63歳,女性.上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor:EGFR)遺伝子変異陽性の進行性非小細胞肺癌に対しゲフィチニブ投与開始6か月後,両下腿に約3mm大までの浸潤性紫斑と膿疱が出現した.IgA血管炎,腫瘍随伴性血管炎,薬疹を疑い生検を行ったが,明らかな血管炎や真皮小血管壁へのIgAやC3の沈着は認められなかった.ゲフィチニブの休薬により紫斑が消退,再投与により再燃する経過をとったことからゲフィチニブによる紫斑型薬疹と診断した.EGFR阻害薬による皮膚障害は痤瘡様皮疹や爪周囲炎などがよく知られているが,紫斑型薬疹は比較的稀であり,血管炎との鑑別が重要である.本病型ではゲフィチニブの減量,ステロイド外用などにより継続可能となる症例が多く,ステロイドを内服しても紫斑が新生する場合を除いては,ゲフィチニブの内服継続が望まれる.

下腿に多発する皮疹より診断に至ったサルコイド血管炎の1例

著者: 島香織 ,   山上優奈 ,   一ノ名晶美 ,   櫻井弓子 ,   古賀玲子 ,   石田祐哉 ,   吉川義顕

ページ範囲:P.687 - P.692

要約 29歳,男性.当科初診の3か月前から両下腿全周性に示指頭大の紅色および褐色の局面が多発した.皮疹は軽度の鱗屑を伴い,わずかに圧痛があった.病理組織学的には真皮浅層から皮下脂肪織にかけて非乾酪性類上皮細胞肉芽腫があり,真皮内の血管には血栓形成や血管炎の像を認めた.胸部CTで肺門部リンパ節腫脹と両肺の間質肥厚があり,肺の病理組織学的検査でも類上皮細胞肉芽腫を認めた.眼科にて肉芽腫性虹彩毛様体炎と雪玉状硝子体混濁を指摘された.以上の所見および検査データよりサルコイドーシスと診断した.下腿の皮疹は,サルコイドーシスとして非典型的な臨床像であったことに加え,病理組織学的に血管炎の像を伴っていた.サルコイドーシスは多彩な皮疹を呈するため,臨床像のみから診断に至ることが困難な症例があり,皮膚生検の重要性を再認識した.

乳癌の再発・転移治療中に発症した好酸球性蜂窩織炎の1例

著者: 三井英俊 ,   江川貞恵 ,   相場節也

ページ範囲:P.693 - P.699

要約 60歳,女性.37歳時,乳癌に対し手術,化学・放射線療法を受けた.48歳以降,再発,転移を繰り返し,追加治療が施された.初診2か月前頃から両下腿にかゆみのある皮疹が出現し,むくみと圧痛も伴うようになったため,近医を受診した.抗菌薬を処方されたが,改善なく当科を紹介された.細菌性蜂窩織炎などを疑い加療したが,難治のため皮膚生検施行した.病理組織学的に真皮から皮下組織の好酸球を含む炎症細胞浸潤と特徴的なflame figureを認めた.好酸球性蜂窩織炎と診断し,ステロイド投与開始した.同時期に乳癌胸椎多発骨転移切除術を受けた.その後,ステロイドを再投与せずに軽快し再燃していない.好酸球性蜂窩織炎は,虫刺症,薬剤,悪性腫瘍などに関連するといわれているが,乳癌合併は稀である.臨床所見のみでは他疾患との鑑別が難しいことがあり積極的に皮膚生検を行うべきである.また悪性疾患との関連性を念頭に置き,必要に応じ精査すべきである.

尋常性天疱瘡様症状を呈した潜在性亜鉛欠乏を伴う栄養障害による粘膜皮膚障害の1例

著者: 石川真衣 ,   石渕裕久 ,   関口明子 ,   岸史子 ,   安田正人 ,   石川治

ページ範囲:P.700 - P.704

要約 62歳,男性.口腔内に水疱を生じ,数日で口唇や口腔内にびらんが急速に増大,左前胸部にも紅斑,水疱が出現した.臨床所見から尋常性天疱瘡を疑ったが,生検病理所見では表皮細胞の壊死を主体とする表皮下水疱であり,抗デスモグレイン1,3抗体はいずれも陰性であった.生活歴を詳細に聴取したところ,20年間食事は1日1食のみで,初診の3か月ほど前から自己判断でほぼ栄養補助食品のみを摂取する極端な食事制限を行っていたことが判明した.病院食を3食規則正しく摂取するのみで症状は改善した.入院時の血清亜鉛値は80μg/dlと比較的低値であり,潜在性亜鉛欠乏を伴う栄養障害による粘膜皮膚障害と診断した.亜鉛は必須微量元素の1つであり,欠乏により多彩な粘膜皮膚症状を生じる.自験例では生活歴聴取が診断に重要であった.口腔内に病変を生じた患者では亜鉛などの栄養障害による粘膜皮膚障害も念頭に診察することが必要である.

ダウン症候群患者に合併した多発性皮膚線維腫の1例

著者: 坂本幸子 ,   川本友子 ,   執行彩希 ,   池上隆太 ,   中井千晶 ,   吉田康之

ページ範囲:P.705 - P.710

要約 31歳,女性.ダウン症候群,てんかんの既往あり.約1年前に体幹や四肢の褐色色素斑を自覚し,徐々に増大・増数したとのことで2016年7月に当科を受診した.体幹や四肢に軽度隆起した弾性硬の褐色の皮膚結節を計21か所に認めた.病理組織学的に表皮は肥厚し,真皮上層に紡錘形細胞が花むしろ様に増殖する皮膚線維腫の像を認めた.またトルイジンブルー染色では肥満細胞が増加していた.多発性皮膚線維腫は自己免疫疾患や免疫抑制状態と関連するとされるが,自験例ではダウン症候群以外の合併症は認めず,ダウン症候群に伴う自然免疫の低下などの免疫学的異常が発症に関与した可能性が推察された.

健康な成人男性に発生した多発性皮膚線維腫の1例

著者: 若林祐次郎 ,   小俣渡 ,   中野倫代 ,   外川八英 ,   松江弘之

ページ範囲:P.711 - P.715

要約 52歳,男性.初診6か月前より体幹,下肢に褐色小結節が出現し,増数したため当科を受診した.初診時,体幹,下肢に3〜5mm大のドーム状に隆起する褐色小結節が計16個散在していた.組織学的には真皮浅層から中層にかけて膠原線維と線維芽細胞様の紡錘形細胞が錯綜しており,CD34陰性であったことから多発性皮膚線維腫と診断した.多発性皮膚線維腫には自己免疫疾患の合併例が多いが,自験例では抗核抗体,抗dsDNA抗体,抗SS-A抗体,抗SS-B抗体が陰性,免疫グロブリンも正常値であり,明らかな基礎疾患を認めなかった.複数の皮膚線維腫を見た場合には,免疫学的異常の検索を含めた精査を進める必要があると考える.

動脈塞栓術にて縮小した上口唇の動静脈奇形の1例

著者: 鈴木皓 ,   中山未奈子 ,   宇野優 ,   青木礼奈 ,   尾上智彦 ,   太田有史 ,   増田耕一 ,   竹永晋介 ,   中川秀己

ページ範囲:P.717 - P.721

要約 70歳,女性.初診の2年前より上口唇の皮下腫瘤を自覚し,徐々に増大してきたため当科を受診した.初診時,上口唇に45×20mm大の,表面の一部が紅色調を呈する弾性硬の皮下腫瘤があり,赤唇部の腫脹を伴っていた.触診で同部位に拍動を触れ,3D-CTアンギオグラフィを撮像したところ,同部位に異常血管塊(nidus)を認めた.その後施行した血管造影検査においてもnidusおよび静脈の速やかな描出がみられたため動静脈奇形と診断した.両側の顔面動脈が流入動脈(feeder)と考えられ,血管内治療による動脈塞栓術を2回施行後,拍動は消失し腫瘤は縮小した.塞栓術後14か月現在再増大はない.動静脈奇形の治療としては外科的切除および血管内治療が広く行われているが,特に上口唇のような機能・形態の温存が望まれる部位に対しては,侵襲性の低い治療法として血管内治療を積極的に考慮すべきと考えた.

低用量シクロスポリン内服とステロイド局所注射の併用が有効だった木村病の1例

著者: 野見山留衣 ,   松田光弘 ,   名嘉眞武国

ページ範囲:P.723 - P.727

要約 63歳,男性.4か月前より左耳介後部の腫脹が出現した.当院耳鼻科を受診し木村病と診断された.プレドニゾロン10mg/日,トシル酸スプラタスト300mg/日内服にて加療されたが2年経過後も改善しないため当科紹介受診となった.プレドニゾロン,トシル酸スプラタストの内服を中止し,シクロスポリン100mg/日の内服を開始した.好酸球数は改善を認めたが皮下腫瘤は著変ないためステロイド局所注射を併用したところ皮下腫瘤は縮小した.本疾患の治療としてシクロスポリンとステロイド内服の併用療法の報告が多いが,ステロイド長期内服は副作用が懸念される.ステロイド局所注射は全身投与と比較して副作用が少ない.低用量シクロスポリン内服とステロイド局所注射の併用は治療に伴う副作用を軽減できることから,今後治療の選択肢の1つとして価値ある治療法と考える.

多発皮膚潰瘍を形成した節外性NK/T細胞リンパ腫,鼻型の1例

著者: 椎山理恵 ,   長村義之 ,   石橋正史

ページ範囲:P.729 - P.734

要約 79歳,男性.20年前に喉頭蓋の悪性リンパ腫に対し化学療法治療歴がある.2018年2月頃より左下腿内側に疼痛・皮下硬結を伴う紅斑が出現し,皮膚生検にて皮下脂肪織内の静脈血栓形成と小静脈の血管壁に細胞浸潤を認め,血栓性静脈炎と診断した.しかし,その後38℃以上の間欠的な発熱と鼻出血が継続した.生検部位は潰瘍となり,陰部・右上腕内側にも壊死を伴う紅斑が出現し拡大した.再度皮膚生検を施行した結果,真皮・脂肪織に小型〜大型の異型リンパ球浸潤を認め,免疫染色で腫瘍細胞がCD3+,CD56+,CD30+,ISH法でEBER+であり,節外性NK/T細胞リンパ腫,鼻型と診断した.精査加療目的に他院血液内科へ紹介後,PET検査で皮膚,咽頭,肺,骨への集積を認め,化学療法を開始したが転院から3か月後に血球貪食症候群をきたし永眠された.急激な臨床経過で確定診断に至らない場合は何度も生検し,積極的な精査が肝要である.

マイオピニオン

ハンセン病の現状

著者: 石井則久

ページ範囲:P.660 - P.661

 1. はじめに
 Hansen(ハンセン)病が皮膚科の世界で話題になることはほとんどなくなった.患者がいないことが大きいが,研究でも大きな進展がなく,興味や関心の外になってしまった.
 しかし,ハンセン病を識ることで,皮膚科医の存在理由である「正常皮膚と異なる変形,変色,変化を治す」という意味を深慮すべきである.目に見える変形,変色,変化などの皮膚病変は人々から忌み嫌われ,時に偏見・差別も生み,人権問題まで起こすのである(図).皮膚病変を改善・軽快・治癒,そして正常の状態を保つことが皮膚科医に求められている.
 変形・変色などの皮膚病変に対する偏見・差別は日本のみでなく世界に,それも太古からの共通した問題であり,その中でハンセン病は第一に挙がるものである.病気に対する国際的な援助,救済,そして国際協力に立ち上がったのもハンセン病が最初であった.

印象記

第118回日本皮膚科学会総会印象記

著者: 高橋勇人

ページ範囲:P.736 - P.739

 第118回日本皮膚科学会総会が名古屋大学大学院医学系研究科皮膚科学講座(以下,名古屋大学皮膚科) 秋山真志教授(図1)を会頭に2019年6月6日(木)から4日間,名古屋国際会議場にて開催された.日本皮膚科学会総会(以下,総会)は第111回総会より京都と横浜での交互開催の形式で行われてきたが,2011年の東北大震災後の復興をスローガンに,2017年の第116回総会が仙台で開催され,その後117回総会の広島開催に続いての主管校現地開催となった.会期中に多少の雨に見舞われたにもかかわらず,大会初日の朝には受付に列ができ,ランチョンセミナーの整理券がすぐに配布終了になるほどで,初日から大入りであった.大会4日間の全参加者数は約6,800人と近年稀に見る規模で,以下に記載するようにきわめて盛会に開催された.

連載 Clinical Exercise・144

Q考えられる疾患は何か?

著者: 福屋泰子

ページ範囲:P.657 - P.658

症例
患 者:80歳,女性
主 訴:手指の紫黒色調変化,足趾の紫斑,皮膚潰瘍
既往歴:65歳;卵巣癌,脳梗塞
現病歴:初診の1年前より下腿,足趾に紫斑が出現した.その後自然に軽快したが,1年後に同部位に潰瘍が出現し,左環指にも紫黒色調の変化と疼痛を認めたため,当科を受診した.
初診時現症:両足趾に痂皮を付着した不整形の潰瘍,点状紫斑が散在していた(図1a).右下腿後面にも痂皮を付着する12×12mmの潰瘍を認めた(図1b).左環指のDIP関節から先端にかけて紫黒色調の変化があり,一部潰瘍を形成し,疼痛,冷感を伴っていた(図1c).

--------------------

目次

ページ範囲:P.653 - P.653

欧文目次

ページ範囲:P.655 - P.655

文献紹介

ページ範囲:P.692 - P.692

書評

ページ範囲:P.735 - P.735

次号予告

ページ範囲:P.741 - P.741

あとがき

著者: 石河晃

ページ範囲:P.744 - P.744

 過去において女性医師に対し結婚,出産を契機に退職を勧める医局がありました.現在では産休,育休は当然の権利であることが広く認知され,働く女性の支援体制もゆっくりではありますが整備されてきました.育児休暇中の研究助手支援が受けられたり,育児休暇後の復職時には時短勤務が可能な職場も多くなったと思います.その反面,このような支援を受ける女性と受けない女性の間の格差感,不公平感なども広がってきているように思います.厚生労働省は医師の働き方改革のために行った労働時間調査の結果を公表しています.全年齢医師平均の勤務時間1に対して,各年代の男女別勤務時間は20代で男性1.24,女性1.15,30代で男性1.21,女性0.95,40代で男性1.14,女性0.84などとなっています.医療現場で活躍中の40代の女性医師にとって女性は0.84しか働いていないとされるのは大変心外であることと思います.みんなが0.84しか働いていないということではなく,1.0以上働いている過半数の医師がいる一方で,少なからず0〜0.5の医師がいるというのが正しい現状認識です.子育てが一段落した50代でもまだ0.87と職場復帰が鈍いのが現状です.マンパワーとしての女性の評価の低さが,入学試験での差別を生み,昇進人事の足かせになっていることは否定できません.ライフイベントによる休職は当然ですが,可能な限り早く,さまざまな支援制度を利用して完全職場復帰を果たしていただきたいというのはすべての常勤医の願いです.特に皮膚科は外来のニーズが高い診療科であり,非常勤のパート医師でまかなわれている病院も数多くあり,麻酔科と似た状況が存在します.需要と供給による,いわゆる「神の見えざる手」による非常勤医数の調節は医療全体が医師不足である限り機能しません.過重労働を強いられている医師を救うのは喫緊の課題ですが,そのためには女性医師の職場復帰は即効性のある処方箋です.良い仕組みができないものか日々頭を悩ませています.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?