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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科73巻9号

2019年08月発行

文献概要

症例報告

尋常性天疱瘡様症状を呈した潜在性亜鉛欠乏を伴う栄養障害による粘膜皮膚障害の1例

著者: 石川真衣1 石渕裕久1 関口明子1 岸史子1 安田正人1 石川治1

所属機関: 1群馬大学医学部附属病院皮膚科

ページ範囲:P.700 - P.704

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要約 62歳,男性.口腔内に水疱を生じ,数日で口唇や口腔内にびらんが急速に増大,左前胸部にも紅斑,水疱が出現した.臨床所見から尋常性天疱瘡を疑ったが,生検病理所見では表皮細胞の壊死を主体とする表皮下水疱であり,抗デスモグレイン1,3抗体はいずれも陰性であった.生活歴を詳細に聴取したところ,20年間食事は1日1食のみで,初診の3か月ほど前から自己判断でほぼ栄養補助食品のみを摂取する極端な食事制限を行っていたことが判明した.病院食を3食規則正しく摂取するのみで症状は改善した.入院時の血清亜鉛値は80μg/dlと比較的低値であり,潜在性亜鉛欠乏を伴う栄養障害による粘膜皮膚障害と診断した.亜鉛は必須微量元素の1つであり,欠乏により多彩な粘膜皮膚症状を生じる.自験例では生活歴聴取が診断に重要であった.口腔内に病変を生じた患者では亜鉛などの栄養障害による粘膜皮膚障害も念頭に診察することが必要である.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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