臨床皮膚科74巻1号

2020年01月発行

今月の症例

HIV陽性の帯状疱疹に伴った髄膜炎尿閉症候群の1例

著者： 布袋祐子¹ 山尾明¹ 佐藤美聡¹ 飯泉琢矢²

所属機関： ¹荻窪病院皮膚科 ²荻窪病院神経内科

ページ範囲：P.13 - P.16

要約　50歳，男性．右側第5胸髄の帯状疱疹のためアシクロビル750mg/日で加療を開始したところ，数日後より髄膜刺激徴候，下肢のしびれおよび尿閉が出現した．髄液検査にて水疱帯状疱疹ウイルス陽性であったため，帯状疱疹に伴う髄膜炎尿閉症候群と診断した．アシクロビルを1,500mg/日に増量し14日間投与したところ，髄膜炎症状は速やかに改善し，尿閉は約2か月で軽快した．経過中，human immunodeficiency virus(HIV)抗体陽性，CD4値の低下が判明し，無症候期のHIV感染症と診断した．帯状疱疹に髄膜炎尿閉症候群を合併することは稀であり，HIV感染症を伴った例はわれわれが調べえた限りみられなかった．われわれ皮膚科医は帯状疱疹に髄膜炎尿閉症候群が合併しうることを認識する必要があると思われた．

参考文献

1) 清水　宏：新しい皮膚科学，中山書店，p492, 2018

2) Kim SH, et al:Ann Dermatol 29:283, 2017

3) 内藤かさね，他：広市病医誌 28:41, 2012

4) 尾本百香，他：皮膚臨床 60:457, 2018

5) 清水洋祐，他：泌紀 45:435, 1999

6) Takahashi O, et al:Intern Med 49:1813, 2010

7) 伊藤祐二郎，他：泌紀 55:655, 2009

8) 竹島慎一，他：臨神経 57:492, 2017

9) 松本英之，橋田秀司：別冊日本臨牀新領域症候群シリーズ 25:140, 2013

10) Abe M, et al:Intern Med 54:2065, 2015

11) Sakakibara R, et al:Neurourol Urodyn 32:19, 2013

12) Basoulis D, et al:Int Neurourol 19:207, 2015

13) 宝田英子，他：日皮会誌 122:619, 2012

14) Rhein J, et al:Diagn Microbiol Infec Dis 84:268, 2016