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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科74巻10号

2020年09月発行

症例報告

左下腿に遺残した空襲時の金属片によって皮下膿瘍をきたした1例

著者: 渡邉直樹12 笹田佳江1 早稲田祐也3 早川彰紀1

所属機関: 1公立陶生病院皮膚科 2名古屋大学医学部附属病院皮膚科 3公立陶生病院整形外科

ページ範囲:P.759 - P.764

文献概要

要約 83歳,男性.約73年前に空襲にあい,左下肢を受傷.以後,左下腿に金属片が遺残したまま生活していた.2日前から左下腿に腫脹と疼痛が出現.初診前日より同部位に発赤をきたしたため受診した.炎症反応の上昇があり,下肢CTで左下腿皮下に異物と複数の囊胞状の腫瘤を認めた.遺残した金属片の周囲に生じた膿瘍と考え,第1病日に切開排膿を行い,抗菌薬加療を開始.その後炎症反応は速やかに改善した.第4病日に異物を摘出.異物は2×1×0.5cmの腐食した金属片であった.第12病日に被膜のデブリードマンを行い,外用で肉芽形成と上皮化をはかった後,第55病日に退院となった.皮下の金属遺残では比較的長期間を経て症状が生じた症例が散見されるが,本症例は70余年ときわめて長期を経て感染の原因となっていた.同様の遺残物を発見した際は積極的に摘出を試みる必要があると考えられた.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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