臨床皮膚科74巻10号

2020年09月発行

症例報告

会陰部子宮内膜症の1例

著者： 福島桂子¹ 蒲澤美代子¹ 保谷茉莉² 甲斐浩通¹

所属機関： ¹河北総合病院皮膚科 ²河北総合病院産婦人科

ページ範囲：P.777 - P.781

文献概要

要約　24歳，女性．会陰部の軽快と再燃を繰り返す2cm大腫瘤について当院産婦人科より紹介された．圧痛はなく，月経期間に一致せず腫脹が増悪した．病理組織像では単房性の囊腫状病変周囲に不規則な管腔構造，線維組織性間質，ヘモジデリン沈着，赤血球漏出を認めた．管腔は2，3層に重層し，一部，断頭分泌を認める好酸性の細胞から成り，間質の細胞は紡錘形で核は小型であり，免疫組織化学染色でCD10陽性であった．以上より子宮内膜症と診断した．会陰切開歴のある生殖可能年齢女性の会陰部腫瘤では，圧痛や月経時の症状増悪を伴わなくとも会陰部子宮内膜症を鑑別疾患とし，肛門括約筋との癒着の可能性を術前に画像評価しつつ，肛門括約筋を損傷しないように手術を行うことが重要であると考えた．

参考文献

1) Kurman RJ, et al(eds):Blaunstein's Pathology of the Female Genital Tract, 6th ed. Springer-Verlag, New York, p625, 2011

2) 升森茂樹，他：日本大腸肛門病会誌 32:524, 1979

3) 種市明代，藤原寛行：産と婦 84:1355, 2017

4) 前田耕太郎，他：日本大腸肛門病会誌 46:891, 1993

5) 竹村由里，大須賀穣：HORM FRONT GYNECOL 16:264, 2009

6) Steck WD, Helwig EB:JAMA 191:167, 1965

7) Nasu K, et al:J Obstet Gynecol Res 39:1095, 2013

8) 斎田俊明：皮膚病理組織学入門，改定第3版，南江堂，p91, 2017

9) Chene G, et al:J Gynecol Cancer 17:709, 2007

10) 角田秀和，他：自治医大紀 37:25, 2014

11) 塗師由紀子，他：産と婦 82:1163, 2015

12) 荒木吉朗，他：日本大腸肛門病会誌 69:227, 2016

13) 豊永敬之，他：日本大腸肛門病会誌 71:228, 2018