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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科74巻11号

2020年10月発行

症例報告

井戸水摂取が原因と考えられた多発Bowen病の1例

著者: 渡邉裕介1 川邉瑠璃子1 鈴木大介12

所属機関: 1独立行政法人地域医療機能推進機構 東京新宿メディカルセンター皮膚科 2公立昭和病院皮膚科

ページ範囲:P.893 - P.896

文献概要

要約 72歳,女性.初診の約10年前に腹部に生じたBowen病の手術歴あり.その後,右肩部・右側胸部・右側腹部に角化を伴う紅斑が3か所出現した.治療として切除を行い,いずれも病理組織学的にBowen病であった.多発Bowen病の発症に砒素が関連している可能性を考えて問診を行ったところ,生下時より約30年間,井戸水を飲料水として使用していたことが判明した.砒素や放射線に曝露する職業歴はなく,長期間の紫外線曝露歴もないことから,自然由来の少量の砒素が混入した井戸水摂取による慢性砒素中毒による多発Bowen病と考えた.今後,日本ではこのような症例はみられなくなっていくと思われるが,海外では依然として砒素の関与する皮膚疾患がみられることを鑑みると,多発Bowen病の原因として砒素の関与を念頭に置き,井戸水の摂取が砒素曝露になりうるということを知っておくことは皮膚科医として必要であると考える.

参考文献

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9) 川津智是:日皮会誌 94:787, 1984

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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