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症例報告
手術部の洗顔回避により生じたアカツキ病の1例
著者: 藤原暖1
所属機関: 1福山市民病院皮膚科
ページ範囲:P.1021 - P.1024
文献購入ページに移動要約 51歳,女性.両側眼瞼下垂の手術後から患部悪化を恐れ,両側上眼瞼と眉毛部を避けてフェイスシートで顔面を清拭するのみで,数年間洗顔をしなかった.その結果,両側上眼瞼や眉毛部に隆起性皮疹が生じ,徐々に増生し,日常生活に支障をきたしはじめたため来院した.初診時,角化性病変の一部は視界を遮るほど増大していたが,鉗子で容易に除去することができた.除去した病変の病理組織所見は,角化物や毛包を含み,角化物とともに酵母様真菌が多数集簇していた.培養では皮膚常在菌をはじめ,Aspergillus niger なども検出された.手術部のスキンケアに対して心的機制が強く影響したアカツキ病と診断した.術部の悪化を過度に恐れ,指示通りにケアが行えない特異的恐怖症を持ち合わせる患者の治療では,段階的な課題を設定し,さらに,精神的アプローチも含め,術後の処置方法や日常生活の注意点など説明の工夫が必要と思われた.
参考文献
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