臨床皮膚科74巻4号

2020年04月発行

症例報告

多発皮下膿瘍を呈したNocardia farcinicaによる皮膚ノカルジア症の1例

著者： 福島桂子¹ 蒲澤美代子¹ 石藤智子² 甲斐浩通¹

所属機関： ¹河北総合病院皮膚科 ²河北総合病院感染症内科

ページ範囲：P.353 - P.357

要約　95歳，男性．前立腺癌に対しプレドニゾロン内服中，数週間の経過で左前胸部と左前腕の皮下腫瘤が出現し，その後増大した．左前腕部の生検時に多量の排膿があった．膿培養で生えたコロニーの質量分析によりNocardia farcinicaが同定され，皮膚以外に明らかな感染部位はなく，同菌による皮膚リンパ型ノカルジア症と診断した．感受性のあったスルファメトキサゾール・トリメトプリム合剤とミノサイクリンで治療し再燃認めていない．免疫抑制状態の患者の皮膚病変は，ノカルジア症を含む日和見感染症の可能性を考え各種培養とその感受性試験を提出することが大切である．特にNocardiaは菌種により薬剤感受性が異なることから，菌種まで同定し，その感受性試験が出るまでの間は，疫学的な薬剤感受性を考慮した抗菌薬の選択を行うことが重要である．

参考文献

1) Ambrosioni J, et al:Infection 38:89, 2010

2) Beaman BL, et al:Clin Microbiol Rev 7:213, 1994

3) Saubolle MA, et al:J Clin Microbiol 41:4497, 2003

4) 森永朝美，他：日臨微生物誌 23:225，2013

5) Valdezate S, et al:J Antimicrob Chemoth 72:754, 2017

6) Wilson JW:Mayo Clin Proc 87:403, 2012

7) Kageyama A, et al:Eur J Epidemiol 19:383, 2004

8) Budzik JM, et al:Surgical Infections 13:163, 2012

9) 横田　昌，他：日医真菌会誌 51:93, 2010

10) Shimizu T, et al:J Am Acad Dermatol 38:874, 1998

11) Malani AK, et al:J Natl Med Assoc 98:977, 2006

12) 錦織恵美，他：皮膚臨床 57:2073，2015

13) 島田信一郎，他：感染症誌 84:206，2010

14) 金本　淳，他：日臨細胞会誌 39:364，2000