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増刊号特集 最近のトピックス2020 Clinical Dermatology 2020 2.皮膚疾患の病態
汗孔角化症を引き起こす遺伝学的メカニズム
著者: 久保亮治1
所属機関: 1慶應義塾大学医学部皮膚科
ページ範囲:P.49 - P.52
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汗孔角化症は,メバロン酸経路の酵素をコードする遺伝子MVK,MVD,FDPS,PMVK のいずれかの変異により生じる優性遺伝性疾患である.これらの遺伝子はいずれも常染色体上に位置しており,患者は正常アレルと病原性アレルとを1つずつ持つ(変異をヘテロ接合性に持つ).今回われわれは,汗孔角化症の皮疹の1つ1つは,正常アレルにセカンドヒットが生じて両アレル欠損となった細胞がクローン増殖することで生じることを見出した.セカンドヒットが胎生期に一度だけ生じると,そのセカンドヒット細胞がBlaschko線に沿って皮疹を形成し線状汗孔角化症となる.一方,セカンドヒットが成人後に身体のあちこちで独立に生じると,播種型の汗孔角化症となる.日本人のおよそ400人に1人がMVDに共通の病原性変異を有しており,潜在的な汗孔角化症患者が相当数存在する可能性がある.本発見は,汗孔角化症の治療戦略を考える上で基盤となるものである.
汗孔角化症は,メバロン酸経路の酵素をコードする遺伝子
参考文献
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