icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科74巻5号

2020年04月発行

文献概要

Derm.2020

強皮症センターと乾癬センターの狭間で思うこと

著者: 吉崎歩1

所属機関: 1東京大学大学院医学系研究科医学部皮膚科学

ページ範囲:P.91 - P.91

文献購入ページに移動
 現在,私は日常診療に加えて強皮症センターと乾癬センターでの診療に当たっている.強皮症センターでは治験外来を主として担当しており,乾癬センターではセンター長として生物学的製剤治療に注力している.乾癬に対する生物学的製剤治療は,乾癬の病態を改善するのみならず,多くの示唆をわれわれに与える.乾癬に用いられる生物学的製剤の効果はマウスにおいて見出された.しかしながら,ヒトに対する有効性と安全性については,たとえ治験で担保されたとしても,治験集団はあくまでも組み入れ基準に合致した症例であるため,日常診療で出会う多様な患者集団に対する有益性は,薬剤が上市されリアルワールドでの使用経験が蓄積されるまで,広く証明されたとは言えない.このことは,薬剤の真の特性は日常臨床の中で明らかになる,と言い換えることができる.これまでに乾癬に対する生物学的製剤は,絶え間ない開発推進によって9種類が使用可能となっている.これらの多くの薬剤を使用するなかで,期せずして他の疾患を合併している乾癬患者に出会うことがある.強皮症センターでは,年間1,000例を超える強皮症患者を診療しているため,強皮症を合併した乾癬患者に出会う機会は確率論的に多くなり,このような患者へ生物学的製剤が必要となる局面に出会うことがある.そのような際に,われわれは鷹の目になって,皮疹のみに捕らわれずに全体を注意深く観察している.そして,そこから得られた経験をきっかけとし,新たな強皮症治療戦略が生まれることがある.このような実臨床から得られた気付きをマウスモデルに立ち返って確認し(reverse translational study),さらに治験を組み立て,効果が実証されれば患者さんへ還元する(translational study)という一連のサイクルは,臨床医と研究者の2足の草鞋を履くものとして,目指すべき終着点の1つであると考えている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?