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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科74巻5号

2020年04月発行

文献概要

Derm.2020

蕁麻疹外来の長い一日

著者: 葉山惟大1

所属機関: 1日本大学医学部皮膚科学系皮膚科学分野

ページ範囲:P.155 - P.155

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 大学で専門外来を担当していると,どうしても患者さんの待ち時間が長くなってしまう.大変申し訳ないと思いつつも,なかなか短縮できない.いまでこそ蕁麻疹外来には多数の患者さんが受診されるが,7年前に始めたときは週に1,2名ほどであった.私自身,蕁麻疹なんかで患者が来るのだろうかと思っていた.紹介されてくる患者さんが増えるにつれて,蕁麻疹でも生活の質が悪くなっていることを思い知らされた.蕁麻疹により受験,仕事,介護などに影響がある患者さんが来院される.職業によっては軽症でも生活の質が著しく障害されることもあるし,受験生などは人生にかかわるかもしれない.患者さんは原因精査を求めて悲壮な覚悟を持って来院されるのだが,残念ながら慢性蕁麻疹のほとんどは原因不明の特発性蕁麻疹である.したがって特異的な検査はない.とはいえ治せる疾患でもある.患者さんには「原因不明だけど,治せる疾患ですから安心してください」と伝えている.どうしても治療期間が長くなるため,患者さんとの信頼関係が重要となる.問診,治療の説明に時間がかかるのは言うまでもなく,患者さんのストレスの原因を聞いたり,疑問点に答えるうちにみるみる時間は経っていく.かくして私の外来は待ち時間が長くなる.それでも待っていてくれる患者さんには頭が下がる思いである.慢性特発性蕁麻疹に生物学的製剤が使用できるようになったときは,これで外来の待ち時間も減らせるかなと期待していた.しかし,高価な薬剤を使うのに費用効果なども説明しなければならないため,余計時間がかかるようになってしまった.朝から晩までしゃべりっぱなし,患者さんには「先生ご飯食べてるの?」など心配される.それでも治療がうまくいって生活の質が改善されると初診時は表情が暗かった患者さんに笑顔が戻ってくる.今日もこの笑顔に癒されて,長い診療に耐えるのであった.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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