文献詳細
文献概要
マイオピニオン
臨床留学という選択—トロント大学でのクリニカルフェローを経験して
著者: 木下美咲1
所属機関: 1杏林大学医学部皮膚科学教室
ページ範囲:P.386 - P.387
文献購入ページに移動 2017年7月からの2年間,カナダのトロント大学に臨床留学をした.医師として働きはじめたばかりの頃,留学は医者人生の中で自分が最もしそうにないことの1つであり,経験することになるとは想像していなかった.思いがけず留学することになったのは呼吸器外科医である夫の留学について行くことになったからである.渡加が決まったとき,専業主婦になるのも悪くないと思ったが,根が自堕落な自分には,仕事という手段をなくして自律心を保てる自信がなかった.そもそも夫が研究留学で得られる給料は,物価の高いトロントで二人が生活していくに十分でなく,生活のためにも働く必要があった.
かくして留学先を探すことになった.当時私は地方病院への出向を経て大学に帰室したところであった.何割かの皮膚科医がこのタイミングで大学院に進むなか,もっと臨床能力を磨きたいという気持ちが強く,進学しなかった.勤務の合間に再生医療に関連した研究に携わらせていただいたものの,自身のバックグラウンドを考慮すると,唐突に基礎研究の世界に飛び込むことは現実的でないように思えた.そこで臨床,もしくは臨床に根差した研究ができるポジションが理想的だと考えた.せめて日本に帰ってきて浦島太郎状態にならないために,皮膚科医として最低限のスキルを維持したい.そう思い,最終的にはトロント大学皮膚科のクリニカルフェローへの出願を決めた.書類審査とビデオ通話による面接を経て,幸運なことに有給のポジションに採用していただくことになった.ちなみにカナダではUSMLEを取得していなくても,日本の医学部卒業証書,医師免許証,専門医認定証(実はこれが重要!)をそれぞれ公的審査機関に提出し審議を受けて承認されることで,特定の研修機関でスタッフ監督の上,医師として働くことが認められる(実はこの申請過程が複雑で一番ストレスフルな時間だったのだが).
かくして留学先を探すことになった.当時私は地方病院への出向を経て大学に帰室したところであった.何割かの皮膚科医がこのタイミングで大学院に進むなか,もっと臨床能力を磨きたいという気持ちが強く,進学しなかった.勤務の合間に再生医療に関連した研究に携わらせていただいたものの,自身のバックグラウンドを考慮すると,唐突に基礎研究の世界に飛び込むことは現実的でないように思えた.そこで臨床,もしくは臨床に根差した研究ができるポジションが理想的だと考えた.せめて日本に帰ってきて浦島太郎状態にならないために,皮膚科医として最低限のスキルを維持したい.そう思い,最終的にはトロント大学皮膚科のクリニカルフェローへの出願を決めた.書類審査とビデオ通話による面接を経て,幸運なことに有給のポジションに採用していただくことになった.ちなみにカナダではUSMLEを取得していなくても,日本の医学部卒業証書,医師免許証,専門医認定証(実はこれが重要!)をそれぞれ公的審査機関に提出し審議を受けて承認されることで,特定の研修機関でスタッフ監督の上,医師として働くことが認められる(実はこの申請過程が複雑で一番ストレスフルな時間だったのだが).
掲載誌情報