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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科74巻7号

2020年06月発行

文献概要

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あとがき

著者: 朝比奈昭彦

所属機関:

ページ範囲:P.558 - P.558

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 今年は暖冬であった.仕事で新潟に出張したが,平野部だけでなく山間部でも雪をほとんど見なかった.真冬の普段着の多くがその出番を失ったため,来年は自分の体形が変わって着られなくなるのではないか,との不安もよぎる.自分が小学生のときは,首都圏の郊外と言っても,冬の朝がとても寒かった.白い息を吐き,氷の張る水たまりに足をすくわれないように注意しながら道端の霜柱を踏みつぶして遊んだことを思い出す.最近は肌を刺すような寒い日がほとんどなく,都市部だけでなく地球規模の温暖化が進んでいるように感じる.天気予報における平年気温も,その標準値がほぼ10年前から少し高めに設定し直されている.暖冬だけでなく,夏には亜熱帯のスコールのような雨が降ることも多くなり,昨年は台風や豪雨も頻発した.こうした気象の変化の理由の解明は専門家に任せるとしても,それが,われわれ皮膚科医の診る疾患に影響を及ぼしている.例えば,冬の凍瘡の患者がめっきり減った一方で,デング熱のような感染症が都心にまで出現し,亜熱帯の皮膚病を知らないと診断ができない.皮膚科医は,今後も生活環境の大きな変化を見据えて診療を行う必要があろう.そして今,新型コロナウイルスが思いがけず流行し,それが蕁麻疹のような感染症に随伴する皮疹にとどまらず,川崎病の発症や凍瘡様皮疹,水痘様皮疹をはじめ多様な皮膚症状をもたらすことが報道されている.さらには,この流行が日本人の生活様式を変えると同時に心理的ストレスをもたらし,それも皮膚疾患へさまざまな影響を及ぼす.皮膚科医は,これまでの常識にとらわれることなく,柔軟で深い洞察力を持ちつつ患者と向き合っていかねばならないと,決意を新たにしている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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