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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科74巻9号

2020年08月発行

雑誌目次

症例報告

トニックウォーターによる多発固定疹の1例

著者: 黒沼亜美 ,   臼井真理子 ,   石河晃

ページ範囲:P.665 - P.669

要約 41歳,男性.2015年4月,5月,11月に口周囲,手足,陰部に疼痛を伴う紫紅色斑が出現した.2017年12月に同様の皮疹が出現し当院を受診した.診察時,左手背と右手指,両足背と足趾に一部に水疱形成を伴う境界明瞭な紫紅色斑を認めた.口周囲,陰部には軽度発赤があり,皮疹はいずれも疼痛を伴っていた.PSL内服加療により皮疹は色素沈着を残して治癒した.臨床像および組織より固定薬疹と考えた.詳細な問診で炭酸系カクテルの飲酒後に症状が繰り返されていることが判明した.トニックウォーター貼布試験:陰性,口唇へのopen patch test(PT)陰性であった.トニックウォーター投与試験(100ml)で摂取2時間後に同症状が誘発されたため,固定疹と診断した.薬剤以外が原因の固定疹は原因の特定,診断に難渋する症例が多く,飲食物全般の聴取が重要であり,特に飲酒歴のある症例についてはトニックウォーターによる固定疹を念頭に置く必要がある.

プロポリスによるアレルギー性接触粘膜炎の1例

著者: 平田佳子 ,   八代聖 ,   馬場裕子 ,   河原由恵

ページ範囲:P.671 - P.675

要約 59歳,女性.初診2か月前より口腔内の違和感を自覚し,2週間前より口腔内にびらんと疼痛,腫脹を認めたため当科を受診した.初診時,硬口蓋にびまん性のびらんと口唇粘膜に淡い発赤が認められたが自然に治癒.その後ニュージーランド産プロポリスを含むマヌカハニー飴を摂取した際,38.6℃の発熱と粘膜症状が再発した.硬口蓋から行った粘膜生検では,粘膜上皮肥厚と海綿状態,上皮固有層境界部での液状変性,固有層浅層でのリンパ球主体の炎症細胞浸潤を認めた.パッチテストでニュージーランド産プロポリスに陽性反応を認め,アレルギー性接触粘膜炎と診断した.プロポリスによるアレルギー性接触粘膜炎は接触皮膚炎と比べて稀だが,近年のプロポリスを使用した口腔ケア製品や食品等の増加に伴い,報告が散見される.パッチテストで比較的強い陽性反応がみられ,患者へはプロポリスの経口摂取だけでなく皮膚への使用も避けるよう指導が必要と考えられる.

摂食障害による亜鉛欠乏の関与を考えた紅皮症の1例

著者: 青木孝司 ,   福山雅大 ,   佐藤洋平 ,   大山学

ページ範囲:P.677 - P.682

要約 34歳,女性.20歳台前半より摂食障害があり,その影響で数年来長期臥床状態であった.初診1か月前より下痢が出現し,2週間前より全身に皮疹が出現したため当科を初診した.受診時,顔面を除く全身に痂皮や鱗屑を付す紅斑を認め,紅皮症の状態であった.病理組織学的所見では,表皮の錯角化と表皮突起の延長,真皮浅層の炎症細胞浸潤と真皮乳頭の浮腫を認めた.ステロイド外用療法を行ったが皮疹は難治であった.血清亜鉛濃度が低下していたため補充療法を行ったところ,皮疹は著明に軽快した.以上から亜鉛欠乏が関与した紅皮症と考えた.これまで報告された亜鉛欠乏症は経腸栄養や中心静脈栄養が原因となったものが多くみられるが,若年女性に限ると半数が摂食障害に起因するものであった.通常治療に抵抗性の紅皮症を診たときは,年齢や既往歴も考慮し,亜鉛など微量元素欠乏が関与している可能性を考慮すべきであると考えた.

結節性痒疹にデュピルマブが著効したアトピー性皮膚炎の1例

著者: 佐々木梓 ,   桂友理 ,   上田喬士

ページ範囲:P.683 - P.687

要約 43歳,男性.幼少期よりアトピー性皮膚炎で加療していた.40歳頃より体幹四肢に結節性痒疹を伴いはじめ,徐々に増大し難治化した.アトピー性皮膚炎の湿疹は既存治療で効果不十分であり,デュピルマブの投与を開始した.投与後より瘙痒感が減少し,アトピー性皮膚炎の湿疹は改善した.また,湿疹だけではなく,投与2か月後には難治であった結節性痒疹も著明に平坦化した.結節性痒疹は難治な痒みを伴い,治療に難渋することが多い.デュピルマブは痒疹結節を伴うアトピー性皮膚炎にも効果を示すことが多いが,自験例では硬く隆起し,孤立性に分布する難治性の結節性痒疹に著効を示した.結節性痒疹の形成には2型炎症反応が関与していると推測されており,IL-4受容体αサブユニットに対する抗体であるデュピルマブは,2型炎症反を抑制することで痒疹の形成を抑えたと考えた.

排尿障害をきたした帯状疱疹の1例

著者: 水野綾音 ,   常深祐一郎 ,   津島綾子 ,   石黒直子

ページ範囲:P.689 - P.692

要約 63歳,男性.2年前に生体腎移植を受け免疫抑制薬とメチルプレドニゾロン(mPSL)4mg/日を内服していた.初診10日前から左臀部に小水疱が出現した.7日前に近医にて帯状疱疹と診断され,ファムシクロビルを内服したが,5日前に陰茎,陰囊にも小水疱が出現し,4日前に排尿障害がみられ,当科を受診した.帯状疱疹に対し,腎機能を考慮してアシクロビル500mg/日を点滴で7日間投与した.また尿閉がみられたため,膀胱カテーテルを留置し,プレドニゾロン(PSL)60mg/日に増量した.1週間後にカテーテルを抜去したところ,自尿が確認されたため,PSLを漸減し,27日後にmPSL 4mg/日に戻した.その後排尿障害の再発はない.仙髄領域の帯状疱疹では排尿障害の併発に留意する必要がある.ただし,尿閉に対する薬物治療の有無にかかわらず予後は比較的良好である.

左胸鎖関節部に生じた皮下気管支原性囊胞の1例

著者: 小林麻友子 ,   吉田憲司 ,   當麻秀信 ,   村岡真季 ,   加藤寿香 ,   石河晃

ページ範囲:P.693 - P.697

要約 45歳,女性.小学生の頃より左胸鎖関節部に結節を自覚し時々粘液が漏出していた.初診半年前に近医で局所麻酔下に摘出術を施行されたが,初診3か月前より同部位からの粘液漏出が再燃したため当院へ紹介受診した.喉頭ファイバースコピー,表在超音波検査,胸部造影CT検査等施行し気管や縦郭との交通はなく,皮下に限局した囊腫構造であったため局所麻酔下に全摘した.病理組織学的に囊腫壁は多列線毛円柱上皮に覆われており,壁内に杯細胞が散見された.囊腫壁近傍に粘液腺房と導管様構造があり皮下気管支原性囊胞と診断した.皮下気管支原性囊胞は小児期に切除されることが多く,成人での報告例は国内外でも自験例と合わせて11例と少ない.成人例と小児例を比較したところ,成人例では感染の既往が少なく,瘻孔も少ない傾向があった.また,頸部に生ずる先天性囊胞性疾患の鑑別をまとめ,画像検査で周囲臓器との位置関係や連続の有無を確認することが重要であると考えられた.

Panton-Valentine leukocidin産生MRSAによる上背部膿瘍の1例

著者: 富田和貴 ,   森本広樹 ,   田嶋瑞帆 ,   福地健祐 ,   橋本奈々子 ,   池谷茂樹

ページ範囲:P.698 - P.702

要約 59歳,男性.既往にアルコール性肝障害あり.上背部の膿瘍を伴う直径約10cmの隆起性浸潤性病変を主訴に,近医を経て当科を受診した.血液検査でWBC 30,900/μl,CRP 24.98mg/dlと炎症反応が高値だった.入院時の創部培養からPanton-Valentine leukocidin(PVL)産生メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA)が検出された.バンコマイシンとクリンダマイシンを併用し炎症反応は改善した.創部に対して精製白糖・ポビドンヨード軟膏外用とデブリードマンを行った.入院22日目に陰圧閉鎖療法を開始し,入院31日目に分層植皮術を施行し治癒した.癤,蜂巣炎,皮下膿瘍のような化膿性の皮膚深在性感染症を呈した場合,PVL産生MRSAを考慮する必要がある.PVL産生MRSA皮膚感染症は重症化することがある.特に肝疾患を合併する場合には,注意を要する.

抗MDA5抗体と抗EJ抗体が陽性となった若年性皮膚筋炎の1例

著者: 日髙友梨 ,   満間照之 ,   村上めぐみ ,   上野絵里香 ,   水田三由希 ,   相山明輝

ページ範囲:P.703 - P.709

要約 5歳,女児.頰部紅斑,手足に紅斑が出現し,近医でステロイドを外用するも改善せず.次第に,全身倦怠感,近位筋の筋力低下,食欲低下,体重減少と弛張熱が出現した.両頰部のびまん性紅斑と手指のMP関節,PIP関節にGottron丘疹,逆Gottronがあり,爪囲紅斑も目立った.下肢MRIで大腿四頭筋に高信号あり,抗MDA5抗体と抗EJ抗体が陽性であった.以上より,2つの抗体が陽性の若年性皮膚筋炎と診断した.成人の皮膚筋炎と同様,若年性皮膚筋炎も抗体と臨床的特徴の関連付けがある.抗MDA5抗体は,間質性肺炎と関連する.一方で抗ARS抗体は,筋炎,間質性肺炎,関節炎,Raynaud症状に,発熱とMechanic's handsを有することが多いが,小児での同抗体の陽性例は稀である.しかし今回のように2種類の抗体が共存することがあるため,患者において1つの自己抗体が陽性であってもその他の自己抗体のスクリーニングを行うことや抗体特有の臨床症状に注視していくことが重要である.

左上腕に生じ皮下腫瘤を形成した皮膚Rosai-Dorfman病の1例

著者: 柳澤絵里加 ,   大内健嗣 ,   太田志野 ,   椎山理恵 ,   新谷悠花 ,   福島彩乃 ,   大滝真梨香 ,   鈴木彩馨 ,   荒牧典子 ,   貴志和生 ,   三上修治 ,   天谷雅行

ページ範囲:P.710 - P.716

要約 57歳,女性.初診1年4か月前より左上腕に自覚症状を伴わない皮下腫瘤が出現し,緩徐に増大した.初診時,左上腕伸側に5cm大,弾性硬の皮下腫瘤を認め,下床との可動性は不良で被覆皮膚は紅色調を呈し熱感を伴った.全身症状,リンパ節病変は認めず,被覆皮膚は温存し,皮下腫瘤を摘出した.病理組織ではリンパ濾胞の形成,間質の著明な線維化,S100蛋白陽性・CD68陽性・CD1a陰性の大型組織球の密な浸潤とemperipolesisを認め,皮膚Rosai-Dorfman病(cutaneous Rosai-Dorfman disease:cRDD)と診断した.術後4か月で温存した被覆皮膚が扁平隆起し,硬い赤褐色局面を形成した.クロベタゾールプロピオン酸エステルの密封閉鎖療法を開始し,皮疹は平坦化しつつある.cRDDは非常に稀な組織球増殖性疾患であり,丘疹・結節・局面を形成することが多く,皮下腫瘤を形成する例は稀である.cRDDは自然消退しうるため,加療を必要としない例もあるが,自験例のように大きく皮下腫瘤を形成した場合,外科的切除が第一選択になると考えた.

鼠径部に生じたmesothelial cystの1例

著者: 大原満梨奈 ,   日置智之 ,   森知花 ,   神谷秀喜 ,   北島康雄 ,   杉山誠治 ,   山田鉄也 ,   松永研吾

ページ範囲:P.717 - P.722

要約 74歳,女性.B型慢性肝炎,肝細胞癌術後で他院通院中.2018年8月頃より右鼠径部に皮下腫瘤が出現し徐々に増大したため,当科を受診した.右鼠径部に2cm大で弾性軟,下床との可動性良好な皮下腫瘤を認めた.画像検査では皮下組織内の境界明瞭な囊胞性腫瘤で腹腔内との連続性はなく,局所麻酔下で摘出した.病理組織像では,1層の扁平な細胞に裏打ちされた囊胞を認め,免疫染色で囊胞壁の細胞がAE1/AE3,カルレチニン,D2-40,WT-1に陽性であったため,中皮細胞由来のmesothelial cystと診断した.Mesothelial cystは中皮細胞に由来する囊胞性病変で,成因として胎生期の間葉系中皮要素の遺残によるものや腹膜囊状突起の閉鎖不全が考えられている.腹腔内に連続,あるいは鼠径ヘルニアを合併する場合もあるため,術前に画像検査でよく確認し手術を行う必要がある.

Intravenous pyogenic granulomaの1例

著者: 山城奈々 ,   加藤雪彦 ,   梅林芳弘

ページ範囲:P.723 - P.726

要約 74歳,男性.約2年前から,特に誘因なく,左前腕に結節が出現した.初診時,左前腕に可動性良好な索状の皮下結節が存在した.超音波検査で,皮下脂肪組織内に,索状・低エコーの結節を認めた.静脈との連続性があり,結節内部には血流信号がみられた.流入および流出血管を結紮して摘出した.病理組織学的に,静脈の内腔に突出する結節性病変があり,分葉状に増殖する血管内皮と大小の管腔,浮腫性の間質から構成されていた.Intravenous pyogenic granulomaと診断した.本腫瘍は静脈とともに摘出する必要があるため,術前の評価が望ましい.超音波検査で,後方エコーの増強がないこと,静脈との連続性や内部の血流信号を確認することが,粉瘤や他の索状を呈する疾患(神経鞘腫,モンドール病,静脈血栓)との鑑別上有用と思われる.

臀部の化膿性汗腺炎に併発した有棘細胞癌の2例

著者: 金井美馬 ,   林周次郎 ,   池上徹栄 ,   金子ゆき ,   山内瑛 ,   塚田鏡寿 ,   鈴木利宏 ,   濱﨑洋一郎 ,   井川健

ページ範囲:P.727 - P.732

要約 症例1は40歳,男性で,罹病期間9年の臀部化膿性汗腺炎に,症例2は50歳,男性で4,5年前よりあった臀部化膿性汗腺炎に有棘細胞癌を続発した.両症例とも鼠径リンパ節腫大を認めたが,組織学的にはリンパ節転移はなかった.症例1は術後3年1か月,症例2は術後2年4か月の時点で,再発や転移の所見はない.臀部化膿性汗腺炎は慢性炎症性疾患の1つであるが,有棘細胞癌の発生母地にとなることが知られており,将来的な悪性腫瘍発生のリスクを念頭に置いて早期介入や慎重な経過観察が必要と考えられる.本邦における臀部化膿性汗腺炎に続発した有棘細胞癌を集計したところ,複数の症例でリンパ節の腫大がみられた一方で,組織学的にリンパ節を評価されていない症例も散見された.臀部化膿性汗腺炎に伴う反応性のリンパ節腫大と有棘細胞癌の転移を鑑別することがその後の転帰に左右する可能性があった.

ヒドロキシウレア長期投与中に生じた下肢有棘細胞癌の1例

著者: 鹿毛勇太 ,   袋幸平 ,   大須賀裕子 ,   泉佳菜子 ,   中村和子 ,   蒲原毅

ページ範囲:P.733 - P.736

要約 84歳,男性.職業はいけばな講師.本態性血小板血症に対してヒドロキシウレアを長期内服中に,左足背にびらんを伴う結節が生じた.ブラクデシンナトリウム軟膏による外用療法が施行されたが症状は改善せず,皮膚生検により有棘細胞癌と診断された.ヒドロキシウレアによる薬剤性皮膚潰瘍に正座による慢性刺激が加わり有棘細胞癌が発症したと考えられた.治療として,有極細胞癌に対し外科的切除術を施行し,ヒドロキシウレアをブスルファンへ変更した.ヒドロキシウレア長期投与例では,有棘細胞癌など皮膚悪性腫瘍が露光部に生じ得ることが知られているが,非露光部であっても皮膚潰瘍が生じた部位に外的刺激が慢性に加わることで有棘細胞癌など皮膚悪性腫瘍が生じ得る可能性がある.皮膚潰瘍と診断しても,漫然と潰瘍処置を継続せずに,内服薬などの病歴を詳細に確認し,組織学的検査を用いて悪性腫瘍を見逃さないことが重要である.

足底に生じたアポクリン型皮膚混合腫瘍の1例

著者: 高浜由美子 ,   田中隆光 ,   深谷早希 ,   林耕太郎 ,   石川武子 ,   鎌田昌洋 ,   大西誉光 ,   笹島ゆう子 ,   多田弥生

ページ範囲:P.737 - P.741

要約 75歳,男性.15年前に右足底の内側に自覚症状のない大豆大の皮疹が出現し徐々に増大した.現症は30×28mm大の半球状に隆起した広基性腫瘤で淡紅色を呈し,表面平滑で血管拡張を有していた.組織は線維性被膜で覆われた境界明瞭な腫瘍塊で,中央には大型の囊腫が形成され,周囲には索状もしくは結節状の胞巣を認め,小型の角質囊腫も散在していた.胞巣の一部には,小型の類円形の細胞が1〜2層の腺管を構成し一部の内腔に断頭分泌を認めた.間質には粘液性基質が混在していた.足底に生じる皮膚混合腫瘍は頻度が少なく,本邦では自験例を含め9例の報告があり7例がエクリン型であった.足底には解剖学的にアポクリン腺がなく,2例のアポクリン型の報告はいずれも足縁に発生しており,その起源は組織学的にも生毛部からの発生・進展と考えられた.

マイオピニオン

絶滅危惧種

著者: 常深祐一郎

ページ範囲:P.662 - P.663

 最初にお断りです.本欄は論文ではなく,意見欄ですので,個人的な考えを書かせていただきます.勘違いや思い込みが多々含まれている可能性がありますが,見つけても読み飛ばしてください.決してご指摘にならないようにお願いいたします.そういう視点もあるね,ちょっと違うけれどね,くらいに思って流していただけますと幸いです.
 私の専門は何でしょうか?と聞くと,おそらく「真菌症」というお答えが最も多いでしょう.もちろんそのとおりなのですが,アトピー性皮膚炎や乾癬もやっています.最初に専門として取り組んだのが実はアトピー性皮膚炎です.当時のストレート入局の3年目,研修医2年を修了し,大学院に入学したときです.大学院ではアトピー性皮膚炎と乾癬を研究し,アトピー性皮膚炎の専門外来に加えてもらいました.その数年後,脈々と続いてきた東京大学(以下,東大)の真菌外来の最後の1人の先生が異動になるということで,医局長から誰か続きをやるように言われました.同時に,白斑と脱毛症(疾患はちょっと記憶が定かではありません)も担当者がおらず,われわれの世代にどれかやるように指示がありました.私は微生物に何となく興味があったので,真菌に手を挙げました.そこからアトピー性皮膚炎と真菌症を並行してやっていました.アトピー性皮膚炎はちゃんと師匠がいて基礎研究もやっていて(学位はアトピー性皮膚炎です)一応正統派でしたが,真菌は前任者と入れ替わりですから,ちょっと教えてもらった以外は大部分が自己学習で,自己流です.ちなみに乾癬は東大では遺伝子の研究をやっていましたが,東京女子医科大学(以下,女子医大)に移ってから専門外来を始めました.私の論文の中で最もcitationが多いのが乾癬のSNP(single nucleotide polymorphism)の論文です.

連載 Clinical Exercise・156

考えられる疾患は何か?

著者: 田中勝

ページ範囲:P.659 - P.660

症例
患 者:60歳,男性
主 訴:右側腹部,右下肢の皮疹
既往歴:2型糖尿病,糖尿病性網膜症,緑内障
家族歴:特記すべき事項なし.
現病歴:初診の10年前より2型糖尿病にてインスリン治療中であった.1年前より糖尿病性網膜症のためカリジノゲナーゼ(カルナクリン®)内服を開始した.初診の数週間前より右側腹部,右下肢に瘙痒を伴う皮疹が出現した.
現 症:右側腹部,臍下正中,右下肢屈側に暗褐色斑が帯状,線状に融合して分布していた(図1a,b).口腔内皮疹や粘膜疹はなかった.皮疹はBlaschko線に沿って配列していた.
ダーモスコピー所見:淡い紅色を帯びた白色で,線状,霜状に見えるWickham線条が観察された.青灰色の色素小点・小球を取り囲むように褐色の色素沈着がみられた(図1c).

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目次

ページ範囲:P.655 - P.655

欧文目次

ページ範囲:P.657 - P.657

文献紹介

ページ範囲:P.702 - P.702

次号予告

ページ範囲:P.743 - P.743

あとがき

著者: 阿部理一郎

ページ範囲:P.746 - P.746

 もう新型コロナウイルスの話もしたくないのですが,どうしてもそれに関連したことしかありません.
 6月末に日本皮膚科学会新潟地方会例会をWEB開催しました.日本皮膚科学会総会が完全WEB開催されることになり,まだまだ多人数での集会ははばかれる状況でしたので,地方会もWEBで行おうと予定しました.と,書くのは簡単なのですが私の早計な提案で,担当した教室員は大変な苦労でした.地方会員数の規模から,業者を入れず手弁当で始めてもらったのですが,正直マニュアルも全くないところからの出発で,例えば会員の先生が参加していただいているということを担保する記録の仕組みなど手探りです.当日どうにか会を終えたときには,担当した者はほっとするよりちょっと虚脱感に浸っているようでした.もちろん関連していろいろなトラブルがあり,ご迷惑をお掛けしてしまった先生もいらっしゃいました.完全な形で行えず,地方会の先生方には大変申し訳なく思っております.しかしながら会を中止・延期することは簡単ですが,会員の先生の研修の機会が減ってしまい,若い先生の発表の機会も奪うことになります.今の時代,完全・確実を目指すより,まずは前に進むことが大事と考えています.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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