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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科74巻9号

2020年08月発行

症例報告

摂食障害による亜鉛欠乏の関与を考えた紅皮症の1例

著者: 青木孝司1 福山雅大1 佐藤洋平1 大山学1

所属機関: 1杏林大学医学部皮膚科学教室

ページ範囲:P.677 - P.682

文献概要

要約 34歳,女性.20歳台前半より摂食障害があり,その影響で数年来長期臥床状態であった.初診1か月前より下痢が出現し,2週間前より全身に皮疹が出現したため当科を初診した.受診時,顔面を除く全身に痂皮や鱗屑を付す紅斑を認め,紅皮症の状態であった.病理組織学的所見では,表皮の錯角化と表皮突起の延長,真皮浅層の炎症細胞浸潤と真皮乳頭の浮腫を認めた.ステロイド外用療法を行ったが皮疹は難治であった.血清亜鉛濃度が低下していたため補充療法を行ったところ,皮疹は著明に軽快した.以上から亜鉛欠乏が関与した紅皮症と考えた.これまで報告された亜鉛欠乏症は経腸栄養や中心静脈栄養が原因となったものが多くみられるが,若年女性に限ると半数が摂食障害に起因するものであった.通常治療に抵抗性の紅皮症を診たときは,年齢や既往歴も考慮し,亜鉛など微量元素欠乏が関与している可能性を考慮すべきであると考えた.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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