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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科75巻10号

2021年09月発行

文献概要

症例報告

塩酸バンコマイシンにより誘発された線状IgA水疱性皮膚症の1例

著者: 新屋光一朗1 佐々木駿1 張田修平1 井藤遥1 中村華子1 北島真理子1 渡辺秀晃1 末木博彦1 石井文人2 橋本隆3

所属機関: 1昭和大学医学部皮膚科学講座 2久留米大学医学部皮膚科 3大阪市立大学大学院医学研究科皮膚態学

ページ範囲:P.779 - P.783

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要約 84歳,男性.蜂窩織炎に対し塩酸バンコマイシンを含む抗菌薬を投与中に軀幹・四肢に紅斑を生じ水疱・血疱を伴った.薬疹,水疱症を疑い生検した.組織では表皮下水疱を認め,水疱内や真皮浅層に好中球主体の炎症細胞浸潤を認めた.CLEIA法で抗BP180 NC16A抗体は陰性,蛍光抗体直接法でIgAが表皮基底膜部に線状に沈着.1M食塩水剝離ヒト皮膚を基質とした蛍光抗体間接法ではIgAが剝離皮膚表皮側に反応.免疫ブロット法ではLAD-1に対するIgA抗体を認めた.以上より塩酸バンコマイシンに誘発された線状IgA水疱性皮膚症と診断した.塩酸バンコマイシンを中止し,ニコチン酸アミド,塩酸ミノサイクリンを内服し軽快.再発はなかった.薬剤誘発性の線状IgA水疱性皮膚症は,被疑薬を中止し適切な治療を行えば速やかな軽快を期待できるが,標的抗原は多岐にわたり稀な疾患であるので,血清および蛍光抗体法を用いた詳細な検討が必要と考えられた.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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