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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科75巻12号

2021年11月発行

雑誌目次

症例報告

市販外用薬中のジフェンヒドラミンによる接触皮膚炎症候群の1例

著者: 布井春佳 ,   伊藤崇 ,   田中博子 ,   定本真梨子 ,   守井茅 ,   吉濵絵理 ,   鷲崎久美子 ,   橋本由起 ,   森山ゆうき ,   岩切加奈 ,   石河晃

ページ範囲:P.945 - P.949

要約 77歳,女性.両大腿内側の瘙痒性紅斑に市販外用薬を外用したところ,小水疱を伴う紅斑と紅色丘疹が頭皮や手指を含めた全身に拡大した.接触皮膚炎を疑いパッチテストを実施したところ,市販外用薬が陽性を呈した.原因物質を特定する目的で行った成分パッチテストではジフェンヒドラミンが陽性を呈し,市販外用薬に含まれるジフェンヒドラミンによる接触皮膚炎症候群と診断した.ジフェンヒドラミンはヒスタミンH1受容体遮断薬であり,内服薬,外用薬として医療用医薬品だけでなく市販薬として汎用されている.しかし,ジフェンヒドラミンによる接触皮膚炎の報告は少ない.接触皮膚炎を疑い,パッチテストで複数の有効成分が含まれる製品が陽性となった場合は,さらに成分パッチテストを実施し原因成分を同定することで,同一成分を含有する他の製品での再発を予防することが可能となる.

オーバーラップ症候群の悪化によりtoxic epidermal necrolysis-like lupus erythematosusを発症した1例

著者: 嵩幸恵 ,   重原庸哉 ,   加藤峰幸 ,   今泉雄介 ,   島田浩太

ページ範囲:P.951 - P.958

要約 60歳,女性.オーバーラップ症候群でプレドニゾロン(PSL)15mg内服中.初診7か月前より顔面,四肢の瘙痒が出現しステロイド剤を外用していたが,初診4週間前から全身に紅斑が拡大した.初診時,前額髪際部に紫紅色斑を呈し四肢に弛緩性水疱を伴う貨幣大の紅斑が散在した.ヘリオトロープ疹やショールサイン様の皮疹,爪囲紅斑がみられ,粘膜疹はなかった.皮膚生検で表皮の壊死性変化と表皮直下の裂隙,表皮内〜真皮上層にリンパ球,好中球主体の炎症細胞浸潤があり病理組織所見から中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis:TEN)/Stevens-Johnson症候群(Stevens-Johnson syndrome:SJS)が示唆されたが,亜急性の経過や明確な被疑薬が欠如している点が合わなかった.蛍光法でC3が基底膜へ顆粒状に沈着し,全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)関連自己抗体が高値で,TEN-like lupus erythematosus(LE)で初発したSLEと診断した.PSL 30mgに増量し皮疹は速やかに改善した.SLE患者は概して複数薬剤を内服しており,広範囲に水疱・びらんを呈する場合はSJS/TENをまず疑うが,原疾患の病勢や経過を総合的に判断しTEN-like LEを鑑別することが重要である.

ローヤルゼリーにより生じたアナフィラキシーの1例

著者: 新谷友香 ,   峠岡理沙 ,   金久史尚 ,   益田浩司 ,   加藤則人

ページ範囲:P.959 - P.962

要約 23歳,女性.初診5か月前に梅干し,サプリメントを摂取して20分後に咽頭違和感,呼吸苦,眼瞼浮腫,体幹の蕁麻疹が出現した.近医にてアナフィラキシーと診断され,加療を受けた.精査目的に当科を紹介され受診した.プリックテストにて,サプリメントで陽性を認めた.成分別にプリックテストを施行したところ,ローヤルゼリーで陽性を認め,ローヤルゼリーによるアナフィラキシーと診断した.サプリメントは初回摂取であったが,過去にローヤルゼリー含有製品の摂取歴があり,それにより感作に至ったと考えた.ローヤルゼリーによるアレルギーはまだ報告例は少ないが,ローヤルゼリーはサプリメント・健康食品として人気が高く,カプセル製剤,ドリンク剤,化粧品などさまざまな分野に用いられていることから,今後アレルギーの報告が増える可能性がある.

ミコフェノール酸モフェチル単剤で寛解維持した再発性難治性尋常性天疱瘡の1例

著者: 青山和弘 ,   宮地秀明 ,   山本洋輔 ,   松江弘之

ページ範囲:P.963 - P.969

要約 54歳,男性.当科初診2か月前から頭部と前胸部に紅斑,水疱が出現した.尋常性天疱瘡の診断でステロイド内服,免疫グロブリン大量投与(intraveneous immunoglobulin:IVIg)療法を行うも,皮疹が増悪し,当科紹介初診となった.二重膜濾過血漿交換法,ステロイドパルス療法,IVIg療法により症状は改善した.アザチオプリンを導入したが肝機能障害が出現し,ミコフェノール酸モフェチル(MMF)に変更した.その後紅斑,水疱ともに消退傾向で,内服ステロイドとMMFを漸減した.退院時にMMFは中止したが,その後紅斑が再燃したため,MMFを再導入し,皮疹・抗体価はともに改善した.退院後に内服ステロイドを漸減・中止し,MMF単剤で2年間寛解を維持できた.治療抵抗性の尋常性天疱瘡には,MMFの導入が治療選択肢として有用であると考えるが,投与報告例は少なく今後の症例の蓄積による検討が待たれる.

間質性肺炎を合併しTスポットの判定が保留であった尋常性乾癬に対し抗IL-17A製剤を導入した1例

著者: 坂本拓海 ,   中村吏江 ,   北原良洋 ,   天野愛純香 ,   木下ひとみ

ページ範囲:P.971 - P.975

要約 74歳,男性.乾癬に対するシクロスポリン内服にて腎機能障害が生じ,腎臓内科および当科に紹介となった.活性型ビタミンD3/ステロイド配合剤外用としたが,脳梗塞で他院入院後,皮疹の増悪と意識障害が生じ再紹介となった.高Ca血症による意識障害であり,外用剤を変更したが皮疹の増悪を認め,患者のQOLに大きな支障を及ぼしていた.導入前検査でKL-6は高値でTスポットは判定保留の結果であったが,抗IL-17A抗体製剤による治療を開始した.治療開始後病勢コントロールは良好であったが6週目でTスポットが陽性となったため全身CTで結核病変は認めなかったが抗IL-17A抗体製剤を中止した.中止後皮疹の再燃あり,イソニアジドの内服後に抗IL-17A抗体製剤を再開した.再開後9か月で結核を疑う所見なく,皮疹の経過も良好であり,またKL-6も低下している.合併症を有する症例においても生物学的製剤は導入前および治療中の慎重な診察が前提ではあるが前向きに検討する余地はある.

皮膚の陥凹を契機に診断されたEhlers-Danlos症候群の1例

著者: 向川早紀 ,   石浦信子 ,   荒川玲子 ,   高野梢 ,   岡﨑敦子 ,   中野(田村)美和 ,   早川奈見 ,   加藤規弘 ,   大河内仁志 ,   玉木毅

ページ範囲:P.977 - P.981

要約 21歳,中国人男性.家族に同症状なし.5〜6年前から誘因なく,体幹,上肢の皮膚が陥凹することを主訴に当院を受診した.腰部,背部,上腕に数か所斑状の皮膚萎縮あり,上腕,顔面,頸部の皮膚過伸展と足関節の過可動性,漏斗胸,腰椎の後彎を認めた.骨密度の低下なし.心電図や心エコー検査の異常なく,水晶体脱臼などの眼症状はみられなかった.皮膚組織の電顕検査にて径不同で鋸歯状や花弁状の膠原線維を認め,Ehlers-Danlos症候群と診断した.遺伝子解析でCOL1A1遺伝子にミスセンス変異(c. 2189C>T. p. Pro730Leu)を検出し,その他の既報告の原因遺伝子に変異を認めなかった.本症例で検出した変異は未報告で,機能喪失変異である可能性が高いと予測された.過去にこの近隣の変異を認めた報告例では骨形成不全の報告が多いため,今後も骨格系の変形を含めた新規の臨床症状の出現がないか慎重な経過観察を要する.

大腿部の巨大な筋肉内腫瘤からサルコイドーシスと診断し心臓病変の早期治療導入が可能であった1例

著者: 清水友理 ,   瀬尾昌裕 ,   大畑千佳

ページ範囲:P.983 - P.988

要約 60歳台,女性.数か月前から右大腿内側腫脹・皮下硬結,右下肢のだるさが出現.CTで筋肉内に巨大腫瘤があり,皮下硬結,筋肉内腫瘤の生検で乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫を認めた.血清ACE活性,sIL-2R上昇と合わせてサルコイドーシスと診断した.筋サルコイドーシスの大部分は無症候性で下腿に多く,大腿部に巨大腫瘤を形成した腫瘤型筋サルコイドーシスは稀である.全身検索を施行し,造影MRIと18F-FDG PET/CTで心臓サルコイドーシスが発見された.本邦におけるサルコイドーシスの死因は心臓病変が最多だが,心サルコイドーシスの早期診断は難しい.今回,皮下・筋肉病変からサルコイドーシスと診断し,心臓病変の早期発見,早期治療につなげることができた.症候性筋サルコイドーシスは稀な疾患であるが,腫瘤を形成し皮膚科を受診しうる.サルコイドーシスの診断に至った際は全身検索を行い,心臓病変に対しては早期治療開始が重要である.

病理組織学的に脂肪滴やTouton型巨細胞を欠いた若年性黄色肉芽腫の1例

著者: 鈴木千尋 ,   川島裕平 ,   木花いづみ ,   石河晃 ,   木花光 ,   栗原佑一

ページ範囲:P.989 - P.994

要約 2歳,女児.右側腹部に自覚症状の乏しい淡紅色の小丘疹が出現し,その後約1か月の経過で20mm以上の腫瘤に増大し,表面より出血や滲出液を認めるようになったため,当科を紹介受診した.診断加療目的に全摘術を施行したところ,真皮内に境界明瞭な紡錘形の腫瘍細胞からなり,リンパ球や好酸球の浸潤を伴った腫瘤形成を認めた.しかし,脂肪滴やTouton型巨細胞は認めなかった.CD68,Factor XIIIaが陽性,S100蛋白,CD1aが陰性であり,巨大黄色肉芽腫と診断した.黄色肉芽腫はnon-X組織球症の中で最も頻度の高い良性の組織球症で,泡沫状の胞体を有する紡錘形の組織球様の腫瘍細胞からなる結節ないし腫瘤である.稀に自験例のような脂肪滴やTouton型巨細胞を欠くnon-lipidized typeの黄色肉芽腫が存在する.これらは細胞異型を伴うLangerhans組織球症との鑑別がしばしば問題となるため,免疫染色および電子顕微鏡所見などで詳細な検討を行い,正確な診断を下す必要がある.

寡分割照射にて局所制御しえた高齢者頸部有棘細胞癌の1例

著者: 杉岡恭子 ,   中井康雄 ,   波部幸司 ,   山中恵一

ページ範囲:P.995 - P.998

要約 90歳台,男性.初診1年6か月前に右頸部腫瘤を自覚した.初診2か月前から急速増大し,精査目的に当科を初診した.右頸部に4×5cm大,可動性不良な紅色腫瘤を認め,生検で有棘細胞癌と診断した.CTでリンパ節転移や遠隔転移は認めないものの,胸鎖乳突筋への浸潤を認め,皮膚原発有棘細胞癌Stage Ⅲと診断した.超高齢,耐術能低下より手術不能例と判断し,放射線治療を選択した.週5回の照射が推奨される照射方法であるが,患者側の事情により週3回の寡分割照射を施行し,局所制御に至った.有棘細胞癌をはじめ,皮膚悪性腫瘍領域における寡分割照射のエビデンスは乏しく,有用性の検証と確立にはさらなる症例の蓄積が望まれると考えるが,自験例のように標準治療に耐えられない皮膚悪性腫瘍患者に積極的に本治療を試みることは患者QOL向上に役立つものと考えられる.

眼瞼下垂で発症しリツキシマブ投与を行った左眼窩内MALTリンパ腫の1例

著者: 熊谷宜子 ,   江上将平 ,   本田治樹 ,   朝倉涼平 ,   杉浦丹 ,   深澤ゑみ ,   吉田喬 ,   横山知明

ページ範囲:P.999 - P.1004

要約 95歳,男性.初診2年前より左眼瞼下垂を自覚し,当科を受診.初診時,左上眼瞼の開瞼幅は前頭筋代償下で2mmの強度眼瞼下垂であった.重眼線部で切開すると,直下に灰黄色調の弾性軟の腫瘤を認めたが,全摘は困難で,腫瘤を可能な限り一塊に切除した.術後MRIでは眼窩内腫瘤の残存を認めた.病理では,異型性を伴ったリンパ球がびまん性に浸潤し,免疫染色でCD20,CD79a,bcl-2が陽性,PCR法でIg-H鎖JHの遺伝子再構成を検出し,眼窩内MALTリンパ腫(mucosa-associated lymphoid tissue lymphoma)と診断した.各種検査でマクログロブリン血症の合併も診断された.患者の希望で無治療経過観察を行ったが術後8か月,左眼瞼下垂の増悪と左上眼瞼腫瘤が増大したため,腫瘍を再摘出し,リツキシマブ投与を行い眼瞼下垂は改善した.MALTリンパ腫は外科的切除が第一だが,眼窩内の症例は切除困難なことがあり,治療法を検討する必要がある.

右示指に囊胞性腫瘤を生じたExophiala oligospermaによる黒色菌糸症の1例

著者: 川島裕平 ,   鈴木千尋 ,   朱瀛瑤 ,   木花いづみ ,   鈴木知幸 ,   佐藤友隆 ,   矢口貴志 ,   栗原佑一

ページ範囲:P.1005 - P.1010

要約 86歳,男性.既往歴に糖尿病,肺癌あり.初診4か月前より右示指に腫瘤を自覚,増大傾向を示した.初診時,右示指PIP関節上に長径1.5cm大の囊胞性腫瘤を認めた.囊胞内容液は漿液性で白濁し,真菌培養検査で黒色真菌が検出された.穿刺後1週間で内容液が再貯留し,局所麻酔下で腫瘤を全切除した.病理組織像で真皮内に線維化と肉芽腫による偽囊腫を認め,偽囊腫内にリンパ球,好中球,形質細胞を主体とした炎症細胞浸潤,多核巨細胞,線維性囊胞壁と内部の膿瘍に真菌成分を認めた.術後にイトラコナゾール200mg/日の内服,カイロによる温熱療法を行い再発を認めていない.切除組織検体の巨大培養で黒褐色絨毛状のコロニーの形成,スライドカルチャーでアネロ型分生子形成を認め,分子生物学的検索でExophiala oligospermaと同定した.現時点で同菌種の報告は少ないが,分子生物学的同定の普及による症例の蓄積により,特徴的な臨床像や有効な治療法の判明に繋がると期待される.

帯状疱疹,単純疱疹において血管炎との鑑別を要する特異な臨床像を呈した1例

著者: 竹原友貴 ,   庄田裕紀子

ページ範囲:P.1011 - P.1016

要約 71歳,女性.11年前より関節リウマチ(RA)で,プレドニゾロン(PSL),メトトレキサート(MTX)を内服していた.汎発疹を伴う左腰背部の帯状疱疹を発症後,左下肢に帯状疱疹が再発し,1か月以上小豆大の潰瘍が持続した.皮膚生検でリウマトイド血管炎と診断したが,Tzanck test陽性,潰瘍辺縁の変性表皮細胞からchronic varicella zoster virus(CVZV)と診断した.さらに3か月後,左下腿前面に米粒大の紫斑が多発,2か月以上持続したため血管炎を疑った.入院し,皮膚生検を2回行ったことにより経過中の新旧の病理像をとらえることができ,herpes simplex virus-2型(HSV-2)による単純疱疹と診断した.下腿は血管炎の好発部位であるが,単純疱疹の好発部位ではないため,紫斑から単純疱疹を診断することは困難である.帯状疱疹や単純疱疹では血管炎を伴い,潰瘍や紫斑を呈する可能性もあり,鑑別疾患に挙げるべきである.

電撃性痤瘡の1例

著者: 野見山留衣 ,   猿田寛 ,   永田寛 ,   石井文人 ,   阿部俊文 ,   名嘉眞武国

ページ範囲:P.1017 - P.1021

要約 13歳,男性.初診2か月半前より前胸部の毛孔に一致する紅色丘疹と膿疱が出現した.近医皮膚科にて痤瘡の診断で加療を受けたが改善なく同部位はびらん,潰瘍化した.その後下肢の筋肉痛と関節痛が出現し,立位保持が困難な状態のため緊急入院となった.急激に発症する重篤な潰瘍と結節性囊腫を伴った痤瘡,1週間以上の関節痛・筋肉痛,および38℃以上の発熱,ESR≧50mm/hより電撃性痤瘡と診断した.プレドニゾロン0.5mg/kg/日の内服を開始し,筋肉痛は軽減し,びらん・潰瘍は瘢痕治癒した.プレドニゾロンを適時漸減し,投与終了後も再燃なく経過しているが軽度の筋肉痛が残存している.自験例は通常の痤瘡の治療には反応せず,ステロイドの全身投与が著効した.本疾患は重症型痤瘡というよりも,SAPHO症候群の類縁疾患として,診療に臨む必要がある.

下腿潰瘍を呈した皮膚クリプトコックス症の1例

著者: 佐々木梓 ,   桂友理 ,   長嶋洋治 ,   井畑淳 ,   上田喬士

ページ範囲:P.1025 - P.1029

要約 88歳,男性.リウマチ性多発筋痛症でプレドニゾロン,メトトレキサートを投与中,左下腿前面に紫斑を伴う暗紅色紅斑を認めた.紅斑の中央部に表皮剝離を認め,その直下には膿瘍を呈していた.細菌感染を考えセファクロルの投与を開始したが,紅斑は徐々に拡大し,びらんは長径10cm大の潰瘍となった.潰瘍辺縁の病理組織では,真皮内に多数の胞子が集簇していた.組織培養からはCandida parapsilosisが検出された.しかしながら,ムチカルミン染色やPAS-アルシアンブルー染色では莢膜が染色されたため,臨床像,病理組織像を踏まえ皮膚クリプトコックス症と診断した.抗真菌薬を投与したが,肺炎を合併し,初診から24日後に永眠した.深在性皮膚真菌症は稀な病型であるが,免疫抑制剤の使用者,高齢者の増加により,有病率は上昇していく可能性があり,注意が必要である.

これすぽんでんす

「下腿潰瘍を呈したCandida parapsilosisによる深在性皮膚カンジダ症の1例」(臨皮 75:347, 2021)を読んで/回答

著者: 望月隆 ,   上田喬士

ページ範囲:P.1022 - P.1024

 皮膚から病原菌として分離されることの稀な菌による深在性真菌症の報告として興味深く読ませていただきました.
 この報告は,診断に問題点が残されているように思われます.

マイオピニオン

金沢医科大学に着任して思うこと

著者: 清水晶

ページ範囲:P.942 - P.943

1. はじめに
 本年4月1日付で金沢医科大学皮膚科学講座の第5代教授を拝命いたしました.出身は埼玉県深谷市で大学は富山,卒業後は群馬大で20年以上働き現在に至ります.途中の英国留学期間を除けば北関東と北陸を行き来しておりました.まだ着任して4か月ですが,診療,研究,教育について思うところをお伝えしたいと思います.

連載 Clinical Exercise・171

Q考えられる疾患は何か?

著者: 石河晃

ページ範囲:P.939 - P.940

症例
患 者:25歳,女性
家族歴:姉の四肢に同様の色素斑がある.
現病歴:小児期から手背と下腿に色素沈着を認めていたが,5年前から次第に色調が濃くなり拡大した.最近になり鼻翼にも同様の色素沈着が出現してきたため当科を受診した.
現 症:左右対称性に両側の手背,足背,前腕と下腿伸側に融合する小豆大までの淡褐色〜褐色斑が多発し(図1a,b),鼻翼にも褐色斑を認めたが(図1c),両頰部には色素斑はなかった.眼球メラノーシスはなく,口腔粘膜にも異常はなかった.

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目次

ページ範囲:P.935 - P.935

欧文目次

ページ範囲:P.937 - P.937

文献紹介

ページ範囲:P.958 - P.958

書評

ページ範囲:P.1030 - P.1030

次号予告

ページ範囲:P.1031 - P.1031

あとがき

著者: 朝比奈昭彦

ページ範囲:P.1034 - P.1034

 皮膚科の領域では,悪性腫瘍はもちろん,特に慢性炎症性疾患である乾癬とアトピー性皮膚炎で新薬の開発が目覚ましく進んでいます.私は医師になって間もなく乾癬の専門外来を始め,1990年頃に日本乾癬研究会(現在の日本乾癬学会)に入会しましたが,当時の会員数は100名にも満たず,乾癬の病態はサイトカインなのですかねえ,という状況でした.それから10年以上が経過しても,当時のT細胞の主役はTh1,サイトカインの主役はTNF-α,IFN-γとIL-1,6,12でした.私自身が乾癬の病態の話をするため2005年頃に使用したスライドには,まだTh17が登場せず,新しく注目されはじめた炎症性サイトカインIL-17をTh1のそばに申し訳なさそうに小さく書き,IL-23も,Th1を活性化させるサイトカインとしてIL-12に併記したのみでした.それをすべてわかったかのように語っていたのです.その後は病態の解明が加速し,IL-23/Th17軸の関与は疑う余地もなく,生物学的製剤を中心に乾癬治療が飛躍的に進歩しました.
 もはや乾癬では新しい治療のターゲットが限られてきて,そろそろ新薬開発のフィーバーも終焉に近いかも,と思いはじめた矢先,その病態が乾癬以上にブラックボックスであるアトピー性皮膚炎で,新薬の開発ラッシュが始まっています.日本の患者数はこちらのほうがずっと多いため,インパクトは絶大です.IL-4/13をターゲットにした治療の効果は,乾癬ほどでなくとも私の予想を上回るものでした.関節リウマチで使われるJAK阻害薬がアトピー性皮膚炎に応用されたことも,予期しなかった展開です.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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