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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科75巻12号

2021年11月発行

文献概要

症例報告

右示指に囊胞性腫瘤を生じたExophiala oligospermaによる黒色菌糸症の1例

著者: 川島裕平1 鈴木千尋1 朱瀛瑤1 木花いづみ1 鈴木知幸2 佐藤友隆3 矢口貴志4 栗原佑一1

所属機関: 1平塚市民病院皮膚科 2平塚市民病院臨床検査科 3帝京大学ちば総合医療センター皮膚科 4千葉大学真菌医学研究センター

ページ範囲:P.1005 - P.1010

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要約 86歳,男性.既往歴に糖尿病,肺癌あり.初診4か月前より右示指に腫瘤を自覚,増大傾向を示した.初診時,右示指PIP関節上に長径1.5cm大の囊胞性腫瘤を認めた.囊胞内容液は漿液性で白濁し,真菌培養検査で黒色真菌が検出された.穿刺後1週間で内容液が再貯留し,局所麻酔下で腫瘤を全切除した.病理組織像で真皮内に線維化と肉芽腫による偽囊腫を認め,偽囊腫内にリンパ球,好中球,形質細胞を主体とした炎症細胞浸潤,多核巨細胞,線維性囊胞壁と内部の膿瘍に真菌成分を認めた.術後にイトラコナゾール200mg/日の内服,カイロによる温熱療法を行い再発を認めていない.切除組織検体の巨大培養で黒褐色絨毛状のコロニーの形成,スライドカルチャーでアネロ型分生子形成を認め,分子生物学的検索でExophiala oligospermaと同定した.現時点で同菌種の報告は少ないが,分子生物学的同定の普及による症例の蓄積により,特徴的な臨床像や有効な治療法の判明に繋がると期待される.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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