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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科75巻13号

2021年12月発行

文献概要

症例報告

左大腿部の慢性拡張性血腫の1例

著者: 鎗山あずさ12 米井希2

所属機関: 1和歌山県立医科大学皮膚科学教室 2公立那賀病院皮膚科

ページ範囲:P.1057 - P.1062

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要約 50歳台,女性.初診の約2か月前に前医で卵巣腫瘍の精査のため行われたCTで左大転子部筋膜上に8cm大の腫瘤陰影を指摘され紹介受診した.境界不明瞭,弾性軟の皮下腫瘤で,下床との可動性は不良であった.悪性軟部腫瘍も否定できないため,生検を行ったところ,内部より多量の茶褐色泥状内容物の排出を認めた.慢性拡張性血腫(chronic expanding hematoma:CEH)を疑い,全摘出を行った.厚い被膜をもつ囊胞様構造で,被膜下にヘモジデリン沈着を伴う肉芽組織,フィブリン塊を認め,病理組織所見よりCEHと診断した.CEHは外傷や手術を契機に1か月以上の経過で徐々に増大する血腫であり,自然消退しない.一般的に軟部組織発生のCEHでは随伴症状は伴いにくいとされる.長期間にわたり増大する皮下腫瘤や経過のはっきりしない皮下腫瘤では,本疾患も鑑別の1つに挙げ,外傷や手術の既往歴,抗凝固薬や抗血小板薬の内服の有無を確認する必要がある.その際,過去10年単位の既往も有用な情報であると考える.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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