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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科75巻2号

2021年02月発行

文献概要

症例報告

ヨツユビハリネズミから感染したTrichophyton erinaceiによる手白癬の1例

著者: 鈴木里香1 木庭幸子1 名取達矢2 林宏一3 奥山隆平1

所属機関: 1信州大学医学部皮膚科学教室 2信州大学医学部附属病院臨床検査部 3松本歯科大学病院皮膚科

ページ範囲:P.153 - P.158

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要約 35歳,女性.ヨツユビハリネズミの飼育歴がある.初診2週間前から左手に痒みを伴う紅斑が出現した.ステロイド外用で改善せず,左鼻下,左耳介,左前腕,右手,右膝にも紅斑が出現した.初診時,左手に鱗屑や小水疱を伴う紅斑を認めた.同部の直接鏡検で菌糸と分節胞子を認めた.巨大培養では乳白色粉状のコロニーを形成した.スライドカルチャーでは球状〜洋梨状の小分生子を認めたが,大分生子やらせん体は確認できなかった.リボソームRNA遺伝子のD1/D2領域およびβ-tubulinの塩基配列から,分離菌をTrichophyton erinaceiと同定した.テルビナフィン塩酸塩125mg/dayの内服とテルビナフィン塩酸塩クリーム1%の外用を行い,皮疹は改善した.左前腕の紅斑のみ治療開始後に悪化したが,ステロイド外用で治癒した.左手以外の顔面や四肢の皮疹は,片側性ではあるが,白癬疹と考えた.強い炎症を伴う手白癬では,好獣性の皮膚糸状菌を疑い,動物との接触歴を聴取すべきである.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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