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症例報告
部分切除と十字切除法により治療した鼻瘤の1例
著者: 古川博基1
所属機関: 1医真会八尾総合病院皮膚科
ページ範囲:P.243 - P.248
文献購入ページに移動要約 59歳,男性.10歳台より鼻部も含めて顔面に尋常性痤瘡を繰り返し生じていた.約10年前より鼻尖部に痤瘡様皮疹が増大し,徐々に鼻全体が肥大してきた.鼻尖部から鼻背にかけて鼻全体がゴルフボール大に腫大し,両鼻翼も小指大に腫大していき,鼻尖の肥大部は下垂していた.表面は凹凸不整のクレーター状で毛孔は著明に開大していた.病理組織学的には,表皮は肥厚し,真皮から皮下組織にかけて膠原線維の増加,皮脂腺の増殖,小血管の拡張,血管周囲にはリンパ球主体の細胞が多数浸潤していた.以上より鼻瘤と診断した.治療は,過去の論文では全層切除と植皮もしくは分層切除施行例が多く散見されるが,自験例では腫瘤部に初回手術として部分切除を,2回目手術として十字切除法を行うことにより植皮を行わず治療し,整容的に満足できる状態になった.鼻瘤は日本では比較的稀であり,いまだその成因は不明である.今回,腫瘤部部分切除と十字切除法のみで良好な手術結果を得たので,治療法選択の1つとして腫瘤部分切除術も考慮すべきであると考えた.
参考文献
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