icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科75巻5号

2021年04月発行

文献概要

Derm.2021

やがて消えゆく?帯状疱疹

著者: 江川形平1

所属機関: 1京都大学大学院医学研究科皮膚科

ページ範囲:P.140 - P.140

文献購入ページに移動
 皆さんは帯状疱疹が世の中からやがてなくなってしまうかもしれないことにお気づきだろうか.ご存じのとおり,VZVは初感染で水痘を,回帰感染で帯状疱疹を発症する.本邦では1987年から水痘ワクチンが接種可能であったが長らく任意接種であったため接種率は約20%前後に留まっていた.2014年からワクチンの定期接種が開始され,その接種率は96〜100%となっている.すなわち次のようなことが起こっている.①1986年以前の生まれ(今年35歳)以前の人は,ほぼ全員がVZVの野生型を体内に保有しているのに対し,②1986〜2013年生まれの約20%,③2013年以降生まれのほとんどの人はワクチンで用いられる弱毒株(Oka株)を保有していることになる.Oka株は,水痘はもちろんのこと,帯状疱疹も発症できない(ただし,免疫不全患者を中心に症例報告は散見される).したがって,現在は水痘患者の減少により人々のウイルスに対する曝露機会が減り(免疫学的ブースター効果が期待できないことから)帯状疱疹患者は年々増加しているが,これは一過性の現象ということになる.Oka株保有者が大多数を占める50〜70年後には,帯状疱疹の発症はほとんどなくなると考えられるがはたしてどうであろう.ウイルスがこの事態に対し何か対応策を講じてくるのかも,われわれは見守る必要がある.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら