臨床皮膚科75巻7号

2021年06月発行

症例報告

下腿に生じた有茎性低色素性基底細胞癌の1例

著者： 島本佳保¹² 楠谷尚¹³ 加茂理英¹² 鶴田大輔¹

所属機関： ¹大阪市立大学大学院医学研究科皮膚病態学 ²香芝生喜病院皮膚科 ³大阪市立総合医療センター皮膚科

ページ範囲：P.511 - P.515

要約　89歳，女性．約10年前に左下腿に約15mmの黒色斑が生じた．病変は徐々に増大，隆起し出血や浸出液を伴うようになった．初診時，左下腿に65×60mm大のびらんを伴う有茎性紅色腫瘤が存在し臨床像から有棘細胞癌，無色素性悪性黒色腫を疑った．ダーモスコピーで腫瘍辺縁の一部にarborizing vessels, blue-gray globules, blue-white structuresを認め，生検の結果から基底細胞癌(basal cell carcinoma:BCC)と診断した．全切除標本の病理組織学的所見では，腫瘍は好塩基性の細胞で構成され，腫瘍胞巣辺縁では柵状配列を呈し，周囲の間質との間にムチン沈着を認めた．Melan-A，HMB45，Fontana Masson染色では腫瘍基部に陽性細胞を多数認めた．低色素性BCCでは，腫瘍の辺縁にBCCに特徴的なダーモスコピー所見がみられる可能性があり，腫瘍辺縁のダーモスコピーによる詳細な観察が重要と考える．

参考文献

1) 清水　宏，他：あたらしい皮膚科学，第3版，中山書店，p444, 2018

2) 中田　礼，他：皮膚臨床 60:322, 2018

3) 屋代未佳，他：皮膚臨床 58:1375, 2016

4) 戸所由起子，他：臨皮 56:74, 2002

5) 織田好子，他：皮の科 14:62, 2015

6) Tan WP, et al:Australas J Dermatol 49:202, 2008

7) Brankov N, et al:J Cutan Pathol 43:1139, 2016