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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科75巻7号

2021年06月発行

文献概要

症例報告

発熱出現前に生じた血液透析患者におけるMSSA菌血症による敗血疹の1例

著者: 古屋佳織12 黒沼亜美1 當麻秀信1 森須祥子1 三海瞳1 橋本由起1 石河晃1

所属機関: 1東邦大学医学部皮膚科学講座 2池上総合病院皮膚科

ページ範囲:P.517 - P.523

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要約 67歳,男性.15年前に心筋梗塞に対して冠動脈ステント留置術施行,9年前から慢性腎不全のため血液透析導入中.初診2週間前より,両下腿から足背にかけて軽度圧痛のある紫斑が出現し,歩行困難となったため2020年1月に当科を受診した.初診時体温36.6℃,血液検査にて軽度の炎症反応上昇を認めるのみであった.病理組織学的には,表皮内に好中球性の膿瘍形成,真皮中層にグラム染色陽性球菌の集簇と好中球の浸潤,血管閉塞像がみられた.第6病日から37.8℃の発熱と炎症反応上昇を認め,血液培養検査でメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(methicillin-sensitive Staphylococcus aureus:MSSA)が検出された.MSSA菌血症に対して抗菌薬投与を開始したところ,解熱,炎症反応の改善が得られ,紫斑は消退した.初診時発熱はなくIgA血管炎との鑑別を要したが,菌塊の存在から敗血疹と結論した.発熱がなくとも原疾患に慢性腎不全がある場合は,敗血疹の可能性を考慮して早期の精査加療にあたる必要がある.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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