臨床皮膚科75巻7号

2021年06月発行

症例報告

高齢者に生じた皮膚腺病の1例

著者： 金子彰良¹ 島田秀一¹ 城野剛充¹ 水橋覚¹ 牧野公治¹

所属機関： ¹国立病院機構熊本医療センター皮膚科

ページ範囲：P.525 - P.528

文献概要

要約　71歳，女性．当院初診1か月半前に右鎖骨上窩に皮下腫瘤が出現し，初診1か月前には左鎖骨上窩にも皮下腫瘤が出現したため当科を受診した．病理組織では炎症細胞浸潤が主体で肉芽腫は形成せず，組織培養検査では，4週間後に小川培地にてMycobacterium tuberculosisが発育した．T-spot^®．TBは陽性，3回連続喀痰塗抹検査は陰性で，胸腹部CTでは傍大動脈リンパ節腫脹は認めたが結節影や浸潤影はみられなかった．皮膚腺病と診断し4剤併用標準療法を行った．日本では人口10万人あたりの結核罹患率は低下傾向を続けているが，他の先進国と比較すると依然高い．皮膚所見から皮膚結核を診断することで，その感染源の臓器特定につながる可能性もある．

参考文献

1) 石井則久：皮膚抗酸菌症テキスト，金原出版，p30, 2008

2) 疫学情報センター2019年8月公表(https://www.jata.or.jp/rit/ekigaku/toukei/nenpou/)

3) 石井則久：皮膚抗酸菌症テキスト，金原出版，p26, 2008

4) 竹本朱美，他：皮膚臨床 61:324, 2019

5) 今山修平：皮膚病理イラストレイテッド，秀潤社，p196, 2012

6) 菊澤亜夕子，他：臨皮 66:537, 2012

7) 小野与里子，他：臨皮 68:991, 2014

8) 岡田全司：結核 85:501, 2010

9) 長谷川好規，他：結核 89:521, 2014

10) 和田耕治：国際的なマスギャザリング(集団形成)に関するレクチャーシリーズ　全5回報告書，国立国際医療研究センター，p61, 2017