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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科75巻8号

2021年07月発行

文献概要

症例報告

Aspergillus tubingensisによる皮膚アスペルギルス症の1例

著者: 澤田利恵12 城野剛充1 栗山春香12 牧野公治1 亀井克彦3

所属機関: 1国立病院機構熊本医療センター皮膚科 2熊本大学大学院生命科学研究部皮膚病態治療再建学分野 3千葉大学真菌医学研究センター臨床感染症医学分野

ページ範囲:P.622 - P.626

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要約 82歳,男性.2015年12月に右第3指に棘が刺さり,近医で切開,異物除去と後に縫合術を受けた.2016年2月頃右前腕にびらんが出現し,同部位に結節が多発してきたため当科を受診した.初診時,右前腕に3か所の皮膚結節があった.結節を生検したところ,真皮内に好中球,形質細胞,多核巨細胞を含む膿瘍がみられた.組織培養の結果,菌の形態はAspergillus nigerに合致したが,遺伝子解析の結果,A. nigerの関連種であるA. tubingensisと判明した.画像検査上,他臓器にアスペルギルス症を示唆する所見はなく,A. tubingensisによる皮膚アスペルギルス症と診断した.イトラコナゾール200mg/日の3か月間内服で治癒した.真菌の遺伝子検査が発達し,「関連種(隠蔽種)」と呼ばれる,形態学的に同一視されてきた別菌種の存在が明らかになった.関連種によっては薬剤感受性が異なり,早期鑑別が適切な抗真菌薬治療に役立つ可能性がある.真菌の分子生物学的検査に関心を持って症例を蓄積・検討していくことは臨床的に有益だと考える.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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