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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科76巻12号

2022年11月発行

文献概要

症例報告

限界線照射部位に生じた多発基底細胞癌と有棘細胞癌—症例報告と限界線誘発皮膚癌の国内外報告60例の検討

著者: 長谷川道子1 日高太陽2 田村敦志1

所属機関: 1伊勢崎市民病院皮膚科 2産業医科大学皮膚科学教室

ページ範囲:P.1007 - P.1014

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要約 65歳,男性.ステロイド外用に抵抗性の陰囊皮疹を主訴に当科を受診した.初診時,陰囊の淡紅褐色浸潤局面のほかに両側鼠径部に淡褐色から黒褐色の浸潤局面ないし結節が計4個みられた.問診で約40年前に陰股部の瘙痒性皮疹に対し限界線照射歴があった.生検組織像から陰囊は放射線角化症,両側鼠径部はいずれも基底細胞癌(basal cell carcinoma:BCC)と診断し,すべて切除した.陰囊の皮疹は切除標本の病理組織像より有棘細胞癌(squamous cell carcinoma:SCC)と確定診断した.限界線療法は50年以上前には白癬,乾癬,湿疹などの良性皮膚疾患に対し広く適用されていたが,現在では行われない.しかし,限界線誘発癌は現在でも稀にみられることがある.限界線誘発皮膚癌の国内外報告60例を検討したところ,発癌までの潜伏期間はSCCで平均15.7年,BCCで53.2年とBCCでより長い傾向があった.一定領域に多発する皮膚悪性腫瘍をみた際には限界線治療歴を含めた注意深い問診が必要である.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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