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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科76巻13号

2022年12月発行

文献概要

症例報告

臨床像が皮膚線維腫を想起させたproliferating trichilemmal cystの1例

著者: 小林英資1 下田由莉江1 牛込悠紀子1 山﨑好美1 佐藤洋平1 下山田博明2 大山学1

所属機関: 1杏林大学医学部皮膚科学教室 2杏林大学医学部病理学教室

ページ範囲:P.1053 - P.1057

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要約 65歳,男性.発症時期不明の左臀部の皮下腫瘍を主訴に来院した.受診時,左臀部に27mm大の弾性やや軟の皮下腫瘍を認めた.表面は褐色調で軽度鱗屑を伴い,表皮と癒着し,下床との可動性は良好であった.MRI画像所見上は線維成分に富んだ腫瘍が考えられ皮膚線維腫を第一に考え切除した.組織学的に真皮の浅層から深層にかけて表皮と連続性のない卵円形の囊胞性病変がみられ,内部には角化物が充塡し,囊腫壁ではtrichilemmal keratinizationを認めた.囊胞壁は一部で不規則乳頭状に増生しておりproliferating trichilemmal cyst(PTC)と診断した.PTCは有棘細胞癌などが鑑別に挙がる頭部に好発する良性腫瘍であり,臀部発生は稀である.自験例では発生部位が機械的刺激を受けやすいことや基礎疾患としての慢性腎不全から患部が色素沈着を生じやすくPTCとして稀な部位であったことが診断を難しくした可能性がある.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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